海外エンタメ 千一夜物語

もの好きビルコンティが大好きなゲームオブスローンズを中心にゴシップ話も交えて、海外ドラマ・エンタメを一人語り・・・

ラムジー・ボルトン 超悪党の魅力

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「スターウォーズ」にはダース・ヴェイダー、バットマンにはジョーカー、「ハリー・ポッター」にはヴォルデモートと、不条理で圧倒的な悪漢がいてこそエンタメ度が増すアクション・アドヴェンチャーの世界。

複雑でリアルな人物像を扱うゲーム・オブ・スローンズの世界は、限りなくグレイな人物で溢れていますが、ラムジー・ボルトン(スノウ)だけは絶対悪に誓い存在。以外に人気もあったりします。今回はその、ラムジー人気を掘ってみます。

※今回はファンフィクションのスラッシュねたも語りますので、ご不快な方は

※人物の語ったセリフは、卑語も交えてそのまま引用しています。

 

 

ラムジー・ボルトンという立ち位置の特殊性

ゲーム・オブ・スローンズ的悪人の、限りないグレイ度を考えてみました。

 

シリーズ序盤、許嫁のサンサ・スタークを虐待したり、ネッド・スタークを斬首にしたり、その暴虐で一番の嫌われ者だったジョフリー・バラシオンですが、堂々たる悪漢には程遠い人物でした。

まだ少年なので、過激な反抗期なのか反社会的人格なのか判断が難しい上、人に命じるだけで自分には戦闘能力も奸智もない弱虫。ティリオンにボコボコにされたり、マージョリー・タイレルに手玉に取られたりと、悪党認可が難しいです。

 

その母親のサーセイ・ラニスター。もともとは、ただの不倫主婦。わが子と自分の安泰を図っているうちに深みにハマった、ある意味悲劇的な存在。

弟で不倫の相方のジェイミーは、民衆を守るために前王を殺害し、サーセイを守るためにブランに手をかけ、と、彼なりに正義があり・・・。おまけに後悔に苛まれていた、グレイな人物の典型です。

 

殺人・略奪・レイプし放題のマウンテンことグレゴール・クレゲインですが、雇い主のラニスター家を裏切りはしない。独立した大悪党というよりは、残虐な忠犬に近いでしょう。

ボルトン家に仕えていたロックも同様です。

 

彼らを雇っていたタイウィン・ラニスターやルース・ボルトンは、政略家として利益追求をしているだけ。

その目指すところは自分の支配下での秩序の擁立であり、コミックスのヴィランたちのように、混乱を招くのが目的ではありません。彼らは、勝っている間は優れた主君であります。

 

秩序ではなく混沌をつくりだすことを常に画していたリトルフィンガーですが、彼の悪事は混乱の種を撒くこと。

圧倒的なパワーで破壊行為を実行したりできないので、凶悪な圧巻というよりは、やはり奸智に長けた政治家です。

 

最後には巨悪と化したデナーリス・ターガリエンですが、元々は虐げられた人々の救世主になろうとしていました。

ですから、彼女の悪は狂った正義。ターガリエンならではの遺伝的狂気の表れとも言えるでしょう。

 

スケールを小さくすれば、私たちの周囲にもいるような、実に人間的な、人間的な悪人たちです。

 

その中で、予測不能な悪意と暴力、破壊的実行力と奸智を備えて、人間的な共感軸をもたない、親族も平気で殺せるサイコパス・サディストであるラムジー・ボルトンは、ジョーカーやハンニバルなどと同等のインパクトを持つ、スーパーなヴィランと言えるでしょう。

 

 

どこまでも醜悪な原作版ラムジー・ボルトン

原作のラムジーは見てくれからして、ゾッとします。

ぶくぶくと太った巨漢で、赤斑らな皮膚を持ち、長い黒髪はいつもベッタリとして、団子っ鼻で殆ど色のない眼は寄っていて、唇は巨大な蛆虫のよう。

ウルトラ不細工な力士がいたら、ラムジークリソツって感じです。おまけに、血と内臓を思わせる赤とピンクの衣装を纏っている。オエっな、ブ男です。

 

幼少期を実の母の元で愛されることもなく過ごし、思春期には動物虐待を始めて手に負えなくなったラムジーですが、野良育ちなので正式な訓練を受けたことはなく、屠殺人のようにしか剣を使えないという、情けない戦闘能力しかありません。

 

見てくれもサイテーですから、カノジョがいるわけもなく、女狩りとレイプが趣味という、ハンパないサイコっぷりは七王国中に鳴り響き、シオンと出会った時はウィンターフェルにレイプ殺人犯として囚われていました。

 

その前に、レディ・ホーンウッドの財産目当てで結婚した後は、妻を塔に閉じ込めて食べるものも与えずに飢え死にさせていました。サンサ・スタークではなく、サンサの幼馴染のジェイン・プールをアリアと称して次に娶ったのですが・・・。ジェインに対する虐待はレイプだけに留まらず、獣姦を強要するという非道っぷり(怒)

 

シオンに対する拷問シーンはないのですが、食べるものを与えられず、空腹のあまり牢獄のネズミを捕まえて食べようとするリークとして登場したシオンの悲惨度は、酷すぎます。

その笑顔が気に入らないと、へし折られた歯は殆どなく、生皮剥ぎで削がれつづけて、手の指は七本しか残っておらず、逃げようとした罰で足の指も何本か切断されている。

恐怖で髪は真っ白になった髪も髭も伸び放題、肋骨が浮いて出るほど痩せこけてシワクチャになり、60歳くらいの老人にしか見えない。

TVのシオンのように、弓矢の使い手として立ち直れるなんて、考えられないような破壊されよう。

ラムジーの元から逃げ出しても、姉のアーシャ(ヤーラ)でさえ

「いっそ、殺してもらったほうが弟のため」と、スタニス・バラシオンに懇願するような惨状となっていました。

 

 容貌だけでなく、行動も醜悪極まる狂犬病の犬みたいな原作版ラムジーです。

 

 

残酷度が洗練されたTV版ラムジー・ボルトン

原作に比べると、 TV版ラムジーの残酷度はトーンダウンしています。

 

原作でも示唆されていた去勢と性的虐待に関しては前回書きましたが、

 

シオン/リークの歯はなくなっていませんし、失ったのは小指の先だけで、足の指も健在のようです。白髪にもなっていないし、老人化もしていません。

 

サンサへの虐待もジェイン・プールが経験したような酷さではありませんし、ミランダというガールフレンドまでいるではないですか。

 

戦闘能力も、シオン並みの弓矢の名手ですし、ヤーラがシオン救出にきた際には斧と短剣の両手使いも見事、スタニス軍との戦では剣で敵を一刀両断、一人で何十人ものスタニス軍兵士を倒したように見えます。ジョン・スノウに簡単に負けたのが意外なほどの強さです。

 

そして、なかなかの謀略家です。鉄の民を説得してシオンを裏切らせウィンターフェルを落城させたり、シオンを囮にしてモート・ケイリンを奪取したり、リコンを逃そうとするオーシャの企みを見抜いたり、ジョン・スノウが熱くなりやすい性格なのを見抜いてリコンを目の前で殺してスノウ軍を混乱させて包囲戦に持って行ったり、なかなかの手腕です。

 

さらに、父ルースを殺して北部総督の地位を手に入れてからのラムジーは衝動的なサディストから、社会的に機能するサイコパスへと成長していきました。スターク家に恨みを持つカースターク家やアンバー家と駆け引きして傘下に収めるところなど、落ち着きと貫禄さえ見せていました。

 

腕も立つし、奸智にもたけているとなると、生きていたらニーガンやラーズ・アル・グールのようなスーパーヴィランになったであろうと期待させます。

 

アメコミの魅力はスーパーヴィランの魅力あってこそ。スーパーヴィランのファンは少なくありません。まずは、このファン層をラムジー・ボルトンは取り込みます。

 

 

ラムジー・ボルトンのコメディ・アワー

 オフビートな英国青春番組「ミスフィッツ」で人気が出たイワン・リオンがラムジーを演じると聞きつけたファンたちは

ラムジー役にはイワンはイケてる過ぎと、不満な様子でした。

 

で、実際に放送が始まると

悪役やヒーローからコメディまで、多彩な演技力を持つイワンが

「自分のやってることを芯から楽しんでる人物」として演じたラムジーは、瞬きしないクレイジーな目つきと歌うように楽しげな声で、不気味で狂ったヴィランっぷりを魅せると同時に、皮肉なユーモアも発揮して、

恐怖に慄くアルフィー・アレンとはミスマッチなスケッチコントのテイストで、実に不可思議な空間を作り上げてくれました。

 

ゾッとするほど残酷なのに、クセになるシオン虐めの迷台詞の数々。

 

If you think this has a happy ending, you haven’t been paying attention. 

ハッピーエンドが待ってると思ったら、ただの注意不足だね。

 

この台詞、私も年中引用してますが、ネット上に山のようなmeme(ミーム、流行りの言葉を付け加えた画像)が拡散しています。 

 

Ramsay:Let’s play a game: which body part do you need the least?”
Theon:Please.....
Ramsay:"Please" is not a body part.

ラムジー:ゲームしようや。お前さ、からだのどのパーツが一番必要ないの?

シオン:お願い(やめて)・・・

 ラムジー:"お願い"はからだのパーツじゃないだろ。


This isn’t happening to you for a reason. Well, one reason. I enjoy it.

 拷問の理由なんてないんだよ。まあ、あるとしたら、俺が楽しいからってか・・・

 

My mother taught me not to throw stones at cripples... but my father taught me, 'aim for their head'!

お袋はカタワに石投げるなって言ったけど・・・、親父は頭狙えって教えてくれた。

 

Kraken. Mmm. Strong as long as they're in the sea. When you take them out of the water, no bones. They collapse under their proud weight and slump into a heap of nothing.

海の怪物クラーケンね。海中だと無敵だよな。でも、水から出ってたら骨なしだろ。誇り高い自分の体重に押しつぶされて、用なしの塊りになっちまうんだなあ。

 

悪人なのにコミカルでクセになる台詞回し、『GOTHAM』のペンギンやリドラーことエド・ニグマ、ジョーカーの元素ジェローム・ヴァレスカみたいに、ヘンテコbad boy好きには、たまらない魅力のキャラです。

 

ということで、redditのasoiaf(氷と炎の歌)コミュには、ボルトン家のサブ・カテゴリーもあり、ラムジー役でロール・プレイングするファンもかなりいます。

このファンたちに共通なのはクレイジーなユーモア。分かる気がします。

 

 

 スラッシュフィクションの主人公としてのラムジー

なんでイケてるイワン・レオンがラムジーなのかという問いに、誰かが「TVのラムジーはフェティッシュな存在だから」と答えたことがあります。

BDSM(SMプレイ)のDOM(支配者)としてのフェティッシュですね。

 

ラムジーとシオンの関係性の危うさは前回述べましたが、これに触発されてしまうファンは少なくないのです。

 

その結果、ゲーム・オブ・スローンズのファンフィクションの数では、ラムジーとシオンのペアがslash(男性同士のロマンティックまたは性的な関係を描く)ジャンルで、レンリー/ロラスを抜いて堂々2位となっています

 

同じサディストでも、ジョフリー・バラシオンやグレゴール・クレゲインは、端役が多いのですが、ラムジーは主演か、スラッシュジャンル第1位のシオン/ロブペアの大敵という活躍ぶりです。

 

相思相愛のレンリー/ロラスや、BL真っ只中のシオン/ロブとは異なり、元々憎悪を土台にしたシオン/ラムジーの物語は、実に興味深いものがあります。

 

基本パターンはドラマに沿って、シオンが苦悩しながらラムジーに屈していく様子や、そこから立ち直ろうとする過程を描くものが多いようですが

 

現代に設定を変えて、様々なバリエーションが生み出されています。

 

転校したらサディスト同級生のラムジーに付きまとわれたり

事故で入院したら恐怖の看護師ラムジーがいたり、

自傷癖のあるシオンがラムジーと出会って、本格的な自己破壊を受け入れてしまったり

薬物中毒のシオンが売人のラムジーに依存してしまったり

ケチな犯罪から逃れるために、ラムジーの助けを借りて監禁されるはめに陥ったり

ラムジーがセクハラな上司だったり

ラムジーがシオンに家庭内暴力を振るうボーイフレンドだったり

 

作者の実体験に基づく話を、シオン/ラムジーというキャラを借りて語ることで、作者が心の重荷から解放されていくパターンも多い現代モノは、なかなか迫力があります

 

かつまた、シオン/ラムジーをスラッシュなペアにして説得力ある物語にするのは難行なので、力のあるベテラン作家が多いのも、迫力ある作品が揃う理由と言えます。

 

 

単に嫌われ者の悪党を超えて、不可思議な魅力を振りまくラムジー・ボルトン

お時間とお気持ちの余裕がある方は

是非、今までとは異なる角度からラムジーの登場シーンを見直していただきければと・・・

願うイワン・リオンファンの私です。

 

 

 

 

www.biruko.tokyo