海外エンタメ 千一夜物語

もの好きビルコンティが大好きなゲームオブスローンズを中心にゴシップ話も交えて、海外ドラマ・エンタメを一人語り・・・

シオン・グレイジョイはラムジーの"リーク"から立ち直れたのか?(1)二人の相似性考察

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実は、アタシが一番興味を惹かれるストーリー・ラインはラムジー・ボルトンとシオン・グレイジョイの不可解な結びつきです。最終シーズンの熱狂も過ぎ去ったようなので、そろそろこれを語ってもいいかも・・・。

サイコパスの心理とか、代償行為とか、耳障りのよくない話題も入ってますので、嫌なかたは読まないようご注意ください。

何故、シオン・グレイジョイはリークになってしまったのか?何故、ラムジー・ボルトンはシオンの生皮を剥いで殺さずにペットにしたのか?

第3・4シーズンのラムジーのカオティックな残虐っぷりを考えると、シオンをなぶり殺しても当然に思えるのですが、そうはならなかった。

何故なのか?その辺をジワジワ考えてみました。

 

 

 

ラムジー・ボルトン/シオン・グレイジョイというパラレル

実はこの二人、共通点が多いのです。

そこで、それぞれを幼少期から振り返ってみようかと・・・

 

 

シオン:捨てられた息子の対処メカニズム

 

グレイジョイ家は鉄諸島の王族ですが、その家訓は"We do not sow 我、種を撒かず"。草木もまばらな荒れ果てた島に住む黒鉄の民は、海賊として海陸を略奪することを生業として、生産するという行為とは無縁です。そのライフスタイルには荒々しく暴力的な人間性が必須となります。

鉄の民を統べるグレイジョイ家の人間は、当然のことながら暴力的で支配的な資質を持たなければ認められません。

 

グレイジョイ家の三男として生まれたシオンは、10歳まで親元で育ちました。幼少期のことをTVのシオンは全く語りません。

父親のベイロンは、第2シーズンで見るとおりの、冷たい猜疑心の塊、残酷な男です。母親のアラニスは原作ではアーシャ(ヤーラ)の視点からのみ語られます。歌に歌われるほどの美女でしたが、長男ロドリックと次男マロンの死で狂ってしまいました。心優しい人だったのでしょう。狂ってもシオンをmy baby boy"と呼び続けています。

シオンの語りでは、兄たちに殴られたことが分かる程度です。

アーシャ(ヤーラ)は、シオンが内気な子供で兄たち畏れていたとも語っています。

ここから、グレイジョイ家にはふさわしくない、少しひ弱なお母さん子、苛められっ子の末息子像が浮かびます。

 

10歳の時にベイロンがロバート王に反乱を起こして敗れ、兄たちは殺され、シオンは人質としてウィンターフェル城のスターク家に預けられます。

エダード(ネッド)・スタークはシオンを人質というよりは、行儀見習いの里子のように扱いますが、10歳の少年なら、ネッドが兄殺しの一味であること、ベイロンに謀反の動きがあれば自分の首が飛ぶという運命は理解できます。当初は恐れと不安に満ちた毎日だったでしょう。

ところが、シオンは残酷な暴力性とは程遠い、ある種、理想的な家族を目にすることになるのです。厳格ではあるけれども思いやり深い父のネッド、脆さを抱えたアラニスとは違い勝気だけれど愛情溢れる母のキャトリン、明るく颯爽として、弟妹思いの長男ロブと彼を慕う幼い子供たち。庶子ジョンという余所者を除けば、仲良し家族。スターク家の子供だったらどんなに良かったかと、シオン少年は思ったでしょう。

とはいえ、スターク家側でシオンを兄弟として受け入れてくれたのはロブだけ。ネッドは、冷ややかな距離を保ち、キャトリンはグレイジョイを信じきってはいない。母親の気持ちは幼子たちに伝わって、彼らはなついてこない。シオンはアウトサイダーとして育ちます。

 

この複雑な環境の中で、シオン少年の対処メカニズムが目覚めます。殺されない善き人質であるために、ネッドの忠実な従士見習い里子として機能する、嫡男であるロブの関心をひいて気に入ってもらい続ける。

年の近い少年たちがいる新しい環境で、もう二度とひ弱な苛められっ子にならないことも大切です。殺されることへの恐れや不安を見せたらおしまい。シオン少年は、恐れや不安を持たない、人生をあざ笑うような不遜な態度を身につけます。そして、自分がいじめっ子になる。立場の弱いジョンは、恰好なイジメの対象になります。

そして、グレイジョイとしてのシオンを疑う人々の視線に対抗するために、シオンはグレイジョイらしさを見せつけていくのです。多くの"塩の妻"を持つ鉄の民らしく、身分の低い女たちを征服して自慢の種にする。自慢話は、思春期のロブやジョンに対して、優越を示す手段でもありました。

 

「人は私を泥棒と言う。だから私は泥棒になる」

これは、サルトルによる文学批評『聖ジュネ』の中の有名な一節ですが、シオン少年の場合、「人は私をグレイジョイと言う。だから私はグレイジョイになる」と言い換えられるでしょう。

不幸なことに、9年間スターク家で過ごしたシオンにとって、グレイジョイであることは血肉ではもうなく、記憶からたぐり寄せた仮想現実でした。

 

なりたいスタークにもなりきれず、「鉄の代償を払う」というグレイジョイの本質も知らない、ひ弱な自分を必死に隠している。この辺に、シオンのアイデンティティの脆さの根があります。

 

グレイジョイとして確固とした意識があれば、ロブの反乱に加わって生涯の忠誠を誓ったりしない。

反対に、スターク家に対する忠誠がしっかりした意志に基づくものであれば、父親に叱責されてロブを裏切ったりしない。

 

どっちつかずのシオンは、ロブへの協力要請で故郷に戻ったところで父ベイロンに本土で育った軟弱者、スタークの走使いと父親から恫喝されると、今度は父に認めてもらうためにウィンターフェルを襲うという、過剰な代償行為へと走るのでした。

 

 

ラムジー:疎まれた子供の過剰な残虐

シーズン5で父ルースが明かした通り、ラムジーはレイプの産物です。領主であるルースの許可を得ず結婚した粉屋を首吊りに処して、その下でルースは嫁を犯します。それから一年経て、粉屋の嫁はルースの子だといって、乳飲み子をドレッドフォート城に連れてきます。最初は、嫁を鞭打ちの刑にラムジーは殺してしまおうと考えていたルースですが、乳飲み子かボルトン家特有の冷たく青い目を持っていることに気づき、自分の息子だと確信してラムジーを引き取ります。

 

原作によりますと、ラムジーには腹違いで嫡男の兄ドメリックがいました。物静かで知的で、騎士としても優れている理想的な息子です。

ルースにとって、ラムジーは不要な婚外の息子だったのです。ラムジーは庶子のスノウとして、ボルトン家の中のアウトサイダーとして育ちます。

 

ある日ドメリックが亡くなり、当然のことながら、ドメリックの死にはラムジーの関与が疑われていました。とはいえ、ひとり息子となって、"ドレッドフォートの落し子"の未来は開けます。

 

粉屋夫婦への仕打ちやスターク家に対する裏切りと仮借ない実行を考えると、ルースはなかなかのサイコパスです。

サイコパスの特徴と言えば、「共感力・良心の欠如、極端な自己中心、他人を操る、非を認めない、衝動的に嘘をつく、口達者」などが挙げられますが、サイコパスが総て犯罪者かというと、そんなこともなく、社会に適応したサイコパスは有能な政治家や起業家であったりします。この当たり、なかなかルースに当てはまっています。

 

サイコパスが遺伝性のものであるかは、議論の余地があるところですが、ルースの気質はしっかりラムジーに受け継がれています。

ここ一番というところでは、思い切り加虐的になれるルースから生まれの低さ、庶子であることをなじられて、アウトサイダーとして育ったサイコパス気質のラムジーは、とんでもなく歪んだ性質を培ってしまいます。

 

認められない、疎まれた息子としてのラムジーもシオンと同様、過剰な代償行為に走ります。"Our blades are shap 我らの刃は鋭い"という家訓と生皮を剥がれた男が旗印のボルトン家。もともと、動物虐待などの性癖を抱えていたラムジーは、誰よりも純粋なボルトンであるべく、七王国では禁じられている生皮を剥ぎ拷問のエキスパートになり、レイプや殺人を繰り返す、残虐サディストに成長したのでした。

 

 

疎まれた息子たちの運命的な出会い

父親に疎まれながら、必死で父親に認めてもらおうとあがく二人の青年が、シオン・グレイジョイによるウィンターフェル簒奪とラムジー・ボルトンによる奪還という紛争を巡って出会うことになります。

といっても、この争いは奸智に長けたサイコパス、ラムジーの不戦勝状態で終わったわけですが・・・

 

シオンを助けると見せかけたラムジーがシオンの告白を引き出すシーンは印象的。

「スタークにもグレイジョイにもなれない自分、ロブに対する羨望、認めてくれない実の父への恨み、理想の父ネッドへの哀悼、無垢な子供を殺したことへの悔恨」などなど。

神妙に耳を傾けていたラムジーの表情が一瞬、嫌悪感のようなものに変貌します。

 

「必死に認められようと罪を犯す疎まれた息子、優秀な兄弟への劣等感」ラムジーはシオンに共通点を見出したはずです。違いは、ラムジーは犯罪を楽しみ、シオンは後悔に苛まれていること。何故なら、シオンは弱いから。ラムジーにとって、シオンはひ弱で劣悪な小ラムジーなのです。

 

 

弱い自分を抹殺するための拷問

心理学的には、否定のための自己投影というものが存在します。自分の中の否定した部分を他者に押し付け、その他者を貶めることで自己嫌悪から逃れきるという行動パターンです。

弱虫の自分というべきシオンは、ラムジーにとって恰好な自己投影の対象です。

 

弓を得意とするラムジーは、同じように弓矢の名手として名を馳せているシオンの小指(原作では3本の指)の自由を奪います。これで、シオンは戦場の無能者となります。

 

次にシオンの男性としての機能を奪います。父親から一人前の男と認められないラムジーは、この欠落もシオンに追わせます。

 

次に、シオン・グレイジョイという名前奪ってリーク(くさや)と名付ける。ボルトンという名前を与えられず、スノウに貶められている自分の身代わりという役割も与えます。

 

様々な自分の負をリークに背負わせることで、ラムジーは完全な強者となり、自己嫌悪を克服しきることになるのです。

 

ただ、この代償行為のためにのみリークが存在するなら、見たくない自分は牢獄の隅に追いやってしまえば良いのですが、ラムジーはリークを傍に侍らすことを選びます。

ここに、ラムジーとリークのさらに歪んだ関係性が読み取れると考えられます。

 

続く!

 

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