『ゲーム・オブ・スローンズ』の第2シーズン以降、彼こそエミー賞に相応しいとファンコミュでは騒がれてきたシオン・グレイジョイ役アルフィー・アレンが、とうとうエミー賞ノミネート!がなのに、7月にノミネが発表されて1月以上!ほぼ何の情報も出てこなかったアルフィー回り。やっとインタビューが出始めたので、もろもろ掘ってみました。
エミー賞ってなによ?
TV界のアカデミー賞と言われ、受賞しなくても候補指名(ノミネーション)されただけでも大変な名誉と言われるプライムタイム・エミー賞。
本年度第71回エミー賞では32部門のノミネーションを獲得した『ゲーム・オブ・スローンズ』。
キャストとしては、主演男優賞にキット・ハリントン、主演女優賞にエミリア・クラーク、助演男優賞ではピーター・ディンクレイジ、ニコライ・コスター=ワルドーに加えてアルフィー、助演女優賞ではソフィー・ターナー、メイジー・ウィリアムズ、レナ・へディ、グェンドリン・クリスティー、ゲスト女優賞でカリス・ファン・ハウテンと、10名がノミネーに選ばれたわけなので、10年間ご苦労様でしたの、まあ、お別れギフトみたいなものと思ったら大間違い!
キット、エミリア、ピーター、ニコライ、ソフィー、メイジー、レナは、お別れギフト的に、制作会社のHBOからエミー賞候補として登録してもらったのですが、
アルフィー、グェンドリン、カリスは、自分で登録料を払ってレジスターしたのでした。
エミー賞のシステムを説明しますと、テレヴィジョン・アカデミーとい運営団体があって、投票権を持つ24,000人のメンバーがいるんだそうです。
受賞候補(ノミネー)になるには、個人または団体による候補登録、たしか$200くらいのレジストレーションが必要になります。で、この登録者の中から受賞候補を数名絞り込む投票があって、今年だと7月16日にこの発表があり、次に本選投票があって9月22日に受賞者の発表、授賞式となるわけです。
なんで、アルフィーのノミネーションが凄いの?
まあ、アカデミー賞に限らず、賞というものは時代のニーズや映画やTVの制作側のマーケッティング戦略の意図に沿うべく決定される政治的なものですよね。
今回のエミー賞は『ゲーム・オブ・スローンズ』のお別れ会みたいなものですから、HBO推薦の7名の皆様は、当然受賞候補に残りました。
自選組には、そんなに状況甘くありません。他にも、自選登録したキャストはいましたが、その中で授賞候補に残ったのは3名だけ。
HBO推薦組は当然のことながら、アルフィー以外の自選組の皆さんは、放送前・放送中の番宣や放送後のインタビューなどで、派手にプロモ活動をしていました。
自選組の中でも、まるで巨大蝶々みたいなドレスでプレミアに現れたグェンドリンなど、相当な話題になっていました。
こういうプロモ活動を、全然していなかったはアルフィー・アレンだけ。プレミアパーティに登場するまで、アルフィーはどうしちゃったのか?と、ファンも心配していたくらいです。そのプレミアでも、これといって話題を提供することもなく、「番組でできた友人たちと楽しく過ごしていた」という本人のinsta投稿があったくらいです。
エミー賞登録後もこれといった動きはなく、公式な顔出しは6月の『ゲーム・オブ・スローンズ』関連パーティにリチャード・マッデンと一緒にゲスト出演していたとか、コミックコンでファンと交流してたくらいです。
『ゲーム・オブ・スローンズ』第8シーズンの出演時間も10分程度。とはいえ、短い各シーンに込められた情念の濃さはハンパなく、アタシのようなファンはシオンが亡くなった後は番組を見ても気持ちが盛り上がりがきえてしまったくらいです。
出演時間が少なく、宣伝活動をしなくても受賞候補に残ったというのは、アルフィー・アレンの役者としての力量をかう人が多かった証拠。
「矮小な役というものはない。矮小な役者が存在するだけだ」というシェークスピアの言葉がズシンと響くような、スゴイ出来事でした。
ノミネートインタビュー、遂に登場
まあ、アルフィー・アレンはバカ正直なところがあるので、インタビューなどもPRサイドとか、アルフィーのマネージメント側が意図的に抑えていたのかもしれません。
それが、ここ数日でポンポンとTVや活字メディアのインタビューが掲載されました。やはり9月のエミー賞本選を意識してのことでしょうか?
CBSのトークバラエティ『レイト×2ショー with ジェームズ・コーデン』出演は、露出効果が高いものではありましたが、内容は超ウスで・・・
やっぱり活字メディアの方は迫力ありますね。
で、これらのインタビューが投票にどう響くか考えてみました。
アルフィー有利になりそうな内容
シオン・グレイジョイ役に心血を注いできて欝になってたことや、シオンの旅路とともにアルフィーも成長してきたこと、シオンファンとはトラウマやPTSDを通して繋がっていることはこれまでも語ってきましたが・・・
新たなネタとしては
シオン・グレイジョイは一般視聴者からみたら「嫌われ者」で共感を得ることも少なかったので、シーズン中は演じる辛さをオープンに語ることができなかったということ、
時々、押しつぶされそうになったけれども、共演者たち、特にキットとグウェンドリンが話を聞いてくれたこと、
シオンがリークになってシオンとして再生する過程は、男性特有のメンタルヘルスが大きく関わっていると考えるようになったこと。
特に、男性特有のエゴ、「TOXIC MASCULINITY(有害な男性性)」というものに、今は非常に興味を持っている事を語っていました。
TOXIC MASCULINITYは、男性から受けた性的被害を公けにしていこうというMeTooムーヴメントと連動して、すごくホットな問題提起となっていますね。
TOXIC MASCULINITYというのは伝統的な男性的価値観「感情を押し殺すこと」「タフな外見を維持するのに拘ること」「暴力によって力の優位をしめすこと」などが持つ有害性を指摘するものです。これって『ゲーム・オブ・スローンス』の世界でも、現実社会でも、戦争やDVを引き起こす諸悪の根源ですね。
で、この有害さのもうひとつの側面は、伝統的な男性的価値観に適合しない男性を「女みたいな」「弱者」として、切って捨てるところです。で、切り捨てられた側は劣等感やトラウマに悩まさると・・・
と、このように考えてくると、シオン・グレイジョイが自分の力を誇示するために空威張りして、ロブを裏切ってウィンターフェル城とスターク家ゆかりの人々の命を奪い、ラムジー・ボルトンの拷問で「男ではない弱者」に貶められ、逃げ出しても社会復帰に苦労し、傷を背負って生きていくことに適応しきれずに英雄的な死を選んだという・・・。その悲劇的な旅がTOXIC MASCULINITYのさまざまな側面と密接に関わってくることがわかります。
TOXIC MASCULINITYとメンタルヘルスの問題をシオン・グレイジョイの役柄と結びつけることで、アルフィー・アレンは非常に今日的問題を提起したことになります。
ここは絶対、エミー賞投票時に有利に働く点だと思います。
アルフィー不利になりそうな内容
『ゲーム・オブ・スローンズ』最終章に対するファンの批判を、アルフィーは「separation anxiety(別れの不安)」と評してしまいました。
これって、シオンの熱烈なファンに関して言えば、事実です。
長年シオンを応援してきた人たちは、アタシも含めて、トラウマを通してシオンと結びつき、PTSDに悩まされながらも人間らしい尊厳を保って生きようとするシオンの姿に勇気づけられてきたのです。だから、シオンが人生から消えてしまうのは不安です。
ところが、最終章を批判する視聴者は、エンディングまでの筋立ての性急さや筋の通らない論理に腹を立てているわけです。
この二つの現象をごっちゃにしたことで、最終章批判のファンからは、ものが見えてない奴に分類されてしまいました。
また、スタッフ批判をしたファンに関しては、嫌がらせをする「荒らし」と批難してしまいました。
これは、アルフィーのエミー賞登録話である最終章第3話「長い夜」が暗くて見づらかったということで、撮影ディレクター、ファビアン・ワグナーに批判メールが殺到し、彼があやまらなければならなくなったという事実に基づいていると推測されるのですが・・・
この推測が正しければもっともな意見なのですが、文脈を無視して引用されると、これまたファンをディスる傲慢な発言と取られてしまします。
インタビューが何本もリリースされて嬉しくはあるのですが、これが吉と出るのか凶と出るのか?
シオン・グレイジョイ役としてのアルフィー・アレンの努力と力量が、並外れたものであったと確信するファンとしては、とても気になるところです。
インタビュー記事リンク
https://www.syfy.com/syfywire/emmy-contender-alfie-allen-game-of-thrones-self-nomination-fans-2019