愛する女のため、愛する家族のため、うろたえ思い悩む男たち。怒りや情念に任せて突き進む女たち。社会的枠組みに常に囚われている男性原理、ギリシア悲劇に出てくるパイドラーやメディアのように激情が炸裂したら止まらない女性原理。
という観点から見ていると、大変意義深い第4話。女たちの今とこれからを探ってみた。
カオス理論を運用するサンサ・スターク
"善き人"、人間を守る戦いの英雄として亡くなったシオン・グレイジョイを火葬にするとき、サンサ・スタークは手放しで嘆き悲しんでいた。まるで、自分の一部を失ったかのように・・・
確かに、サンサは失ったのだと思う。小鳥のように無垢なサンサ・スタークを、シオンと一緒に火葬したのだと。
だから、ハウンドことサンダー・クレゲインに元夫ラムジー・ボルトン誅殺に関して猟犬ジョークを語ることができた。
ここからは、常に政略の人してサンサは生きることになるのだろう。
エイゴン・ターガリエンであるということを打ち明ける前に、ジョン・スノウが秘密厳守の誓いを望んだ時、アリアは敬意を持って受け入れたが
サンサは言葉を濁す。
サンサの裏切りを予知したのだろう。
アリアは二度とウィンターフェルに戻らないことを誓って旅立つ。
サンサは、ジョンの出生の秘密をティリオンにさりげなく伝える。
しかるべき人物にしかるべき情報を伝えて、かすかな波風をたて
それが大きな混沌となるの待ち、混沌に乗じて上昇する。
謀略の師匠リトルフィンガーの真骨頂"カオス理論"をついに発動させたサンサ。
この策略に手をつけたら、誰も信用することはできない。
心を許した時にカルマは巡ってくる。
それでもサンサは師匠と同じ策略を取る。
サンサは師匠をこえられるのか?師匠と同じように道半ばで倒れるのか?
復讐を選ぶアリア・スターク
第2話でジェンドリーとアリアが結ばれて、アリアが普通の女として幸せを手に入れる結末に思いを馳せ
ジェンドリーがバラシオンの後継として認められ、エダード・スタークとロバート・バラシオンが交わした両家の縁組が成就することを願っていたファンも多かったが
どうも、私にはシックリこなかった。
ゲーム・オブ・スローンズのダークネスに惹かれている私としては
ラムジー・ボルトンは預言者で
If you think think this has a happy ending, you haven't been paying attintion.
(ハッピーエンドがあると思うのは、注意力欠陥だね)
なのである。
だから、アリアがジェンドリーの求婚を退けて
ハウンドことサンダー・クレゲインと王都に向かった時は思わずほくそ笑んでしまった。
ハウンドは兄マウンテンことグレゴール・クレゲインと対決することになるだろう。
アリアは遂にサーセイに照準を定めた。
フレイ一族を倒した時のように、顔なき男の目くらましで復讐をとげられるのか?
王都に戻ったジェイミー・ラニスターがどう絡んでくるのか?
私には、アリアとハウンドはソウルメイトに見える。
幼い時に受けたトラウマのために、簡単に他人を受け入れることができない。喜びを分かち合う祝宴も性に合わない。
殺し屋・戦士として戦うときに一番生き生きとする。
そんな二人が相手を牽制しながら寄り添っていると、不思議に心が温まる。
デナーリスvsサーセイは巨悪の戦いになるのか?
"北"の戦士たちのジョン・スノウに対する全き賞賛は、デナーリス・ターガリエンには与えられない。奴隷湾を開放した時の民衆の熱い眼差しはジョン・スノウにむけられ、女王の中に嫉妬を生む。
デナーリスが叔母であること知って、ジョンは二人の関係に及び腰になる。それが彼女を悲しませる。
ジョン・スノウがターガリエン第一の王位継承者であること。ジョンの意志に関わらず、この事実が明るみに出ればジョンを王に押す機運がデナーリスの野望の前に立ちはだかることを彼女は知っている。
その秘密をスタークの妹たちに打ち明けるのを止めようとしても、聞き入れないジョンの頑固さが彼女を苛立たせる。
ユーロン・グレイジョイに我子であるドラゴンのレイガルを殺されて、 デナーリスの腹わたは煮えくり返る。
王都殲滅を望んでも、側近のティリオンとヴァリスは民衆優先の穏便な交渉を説き続ける。女王の苛立ちは増す。
全面降伏を求める交渉の席で、愛する友のミサンディを残酷に殺されてデナーリスの自制心は限界に来ている。
"Dracaris(総て焼き尽くせ)" ミサンディの死に際の言葉がデナーリスを鼓舞する。
デナーリスは救うはずの民衆を捨てて、王都を赤の城を火の海にするのか?
権力を得るために民衆をコラテラルダメージとして切って捨てたら、デナーリスはサーセイと同じ巨悪となる。
偉大な政治的指導者は、皆サイコパスであるという意見がある。
人間を数値として見切れるから、彼らは戦争をすることができる。empathy(他者の痛みに共感する心)を持たず、平気で嘘をつけるのがサイコパスの特性であり、それは政治的指導者に通じる。
サーセイにはサイコパスの資質がある。
デナーリスには共感する心があった。だが、怒りでそれをなくしたら、彼女はサーセイと変わるところがなくなる。
いや激烈な気性を考えると、自制心をなくしたデナーリスは父の狂王エイリスに近いだろう。
ティリオン、ヴァリスといった穏健派はついてこなくなる。結果として裏切りが生じる。
その二人もデナーリスは処刑することになるのか?
デナーリスがそこまで暴走したら
ジョン・スノウは、もう彼女を許せないだろう。
怒りを解き放ったデナーリスはジョンに成敗されるのか?
今後の展開が、とてもスリリングになってきた。