「俺たちの敵は疲れる事もなく、止まることもなく、何も感じない」
ジョン・スノウの言葉通り、倒しても倒しても死体を亡者として使うことで、再び襲い来る"夜の王"の軍勢。勇敢なドスラク軍も鉄壁の軍規を誇る"穢れなき軍団"も崩壊状態に。不落と思われ女子供が隠れるウィンターフェル城の地下納骨堂も破られ、"夜の王"にはドラゴンの炎も通用しないと分かった絶体絶命の危機!
まずは、散っていった勇士たちを、今回は惜しみたいかと・・・
強健なカール・クホノ、飄々とした"冥府の守人"エド、仲間を守って次々と亡くなる人々。
中でも、惜しまれるのは・・・
モーモント家の滅亡
弱小の城主ながら、熊を旗印に女子も戦士となる勇猛果敢で知られるモーモント家は、まさに"北"の、ひいては七王国の守護者ともいうべき一族だった。
先々々代の領主ジオーは家督を息子ジョラーに譲って"冥府の守人"の総帥として七王国を守り、ジョン・スノウを守人として育て、部下の反乱に倒れた。
ジョラーが奴隷売買に関わってエッソスへ逃げた後、女領主となったメイジは忠実な盟主としてロブ・スタークの反乱に加わり、レッド・ウェディングでロブとともに惨殺された。
メイジの娘がリアナ・モーモント。ジョン・スノウの母リアナに因んで名付けられた少女は、幼いながらも聡明かつ勇敢で統率力にも優れた領主となっていた。
そのリアナが亡者となった巨人と一騎打ち。握りつぶされそうになりながら、ドラゴングラスの一撃で巨人を倒して果てる。
享年13歳。なんとも見事な散りざまである。
女王デナーリスに叶わぬ恋をしながら、忠実な腹心として使えてきたジョラーは、弁慶が義経にしたように、満身創痍でデナーリスを守りきって、息絶えた。
愛する女の腕の中で死ねて、ジョラーとしては本望だろうが、
これで、母熊のように頼れるモーモント一家の血筋は絶えてしまった。
悲しいことだ。
死の恐怖を知ってこそ、真の戦士
前回のエピソードで「死が何か、アタシはよく分かってるわよ」と嘯いていたアリア。
特製の武器を二刀流で振り回して獅子奮迅。
その殺陣は相変わらず超badassでめちゃカッコイイののだが
倒しても倒しても襲いかかってくる、何も感じない敵にアリアも次第に恐れを募らせていく。
アリア・スタークが習得した極意は、生きている人間、知覚を持つ対象を相手に、その心理を逆手にとる目くらましの殺人技。何も感じない亡者相手には、何の役にも立たない。
恐怖に駆られて逃げ惑うところを、忠実な友ハウンドことサンダー・クレイゲンと炎の剣を操るベリック・ドンダリオンが駆けつける。
一度はアリアの殺人リストに載った二人。
幼少時に兄グレゴールに火の中に突き落とされ、火事恐怖症になっているハウンドはそのトラウマを超えて、ドンダリオンは自分の生命と引き換えにアリアを救う。
人の縁の妙・・・。
二人と同様、アリアの殺人リストに載っていた"赤の女"
"夜の王"を倒す運命を全うするため、死を覚悟して戻ってきたメリサンドルに
人には果たすべき役割があることを諭され、正気に戻る。
これは殺人ゲームではない。
人類とその記憶を守るための戦いなのだ。
恐れをしらない傲慢な殺人者から、恐れと人の情けを知る戦士となる
アリア・スタークにとっては重要なターニングポイントである。
長く苦しい修行の果てに身につけた技の総てを尽くして
七王国最強の戦士アリア・スタークとして戦いを続けなければならないと。
殺される恐怖を既に知っている男の最後
彼こそは、死が何であるか知っている。
ラムジー・ボルトンというサイコパスの手で何度も死の直前まで拷問され
死を願っても許されず
瀕死の状態から無理やり連れ戻され
"鉄の民"の軟弱で不遜かつ残酷な王子としては一度死んでしまった男。
人以下の生き物、リークとして生き延びて来た男。
リークから正しく生きるシオン・グレイジョイに立ち戻ろうとしているトラウマに悩まされる男。
かつて城を奪って傷つけたブラン・スタークを守って、誇り高いシオン・グレイジョイとして死ぬために、彼はここにいる。
戦いの始まりに過去の非道を謝ろうとし、言葉につまるシオンを遮って、ブランは語る。
Everything you did brought you to where you are now, Where you belong... Home
君がしてきたことの全てが、君をここに導いた。君の居場所、君の家に
本当はスタークの家族になりたかったシオンにとっては、究極の受容の言葉である。
許しではなく、総てを受け入れてもらうこと。多分、シオンが望んでいたのはこれだ。
ブランの言葉に応えて、得意の弓術の矢が尽き、鉄の民が倒れても、シオンはただひとりで亡者を倒し続ける。
多分、ロブが生きていたら、自分を捨てて弟を守るように・・・。
"夜の王"とホワイトウォーカーたちが姿を現し、
"夜の王"のと恐ろしく冷酷で青い眼をみてシオンは凍りつく。
それを察したブランが声をかける。
Theon, you're a good man. Thank you.
シオン、君はいい人間なんだ。ありがとう。
名誉は回復された。シオンの眼は濡れそぼち、涙が頬に伝わる。
シオン自身もシオンを許し、受け入れることが来た。
かすかにリークの唸りが聞こえる。
リークには戻りたくない。
善き人シオンとしてみとめられ、善き人シオンとして死にたい。
今、この瞬間に苦しい生を終えたい。シオンの声が聞こえてくるようだ。
だから、勝てる見込みのない"夜の王"に向かって突撃する。
その冷たく青い眼に睨まれても臆することはない。
シオンは、もう充分にに苛まれてきた。
"夜の王"はラムジーではない。
今、この瞬間、死は開放だ。
"大いなる戦い"の終焉
共に戦い、倒れた仲間が亡者として復活し
戦う希望も削がれそうになったその瞬間
ブランを守るシオン・グレイジョイの防衛戦を崩したと安心していた"夜の王”に
アリアがマイケル・ジョーダンなみの飛翔で襲い掛かり
"夜の王”はバリリア鋼とドラゴングラスの刃に倒れ
彼の軍団は壊滅する。
"夜の王”は知覚する者であるゆえに
あっけなく、両手使いの目くらましに騙された。
闇を倒す"ライトブリンガー"は、バリリア鋼とドラゴングラスの刃だった。
これに気づかないとは、私もうかつであった。
そしてアリアは
1998年NBAファイナルのジョーダンのように
超クラッチな技を決めてヒーローになった。
Valar morghulis. Valar dohaeris.
人間は死すべきものである。そして人間には果たすべき役目がある。
役目を果たした人々は亡くなった。
赤の女は役目を果たし
本来の姿の老婆に戻って生命尽きる。
この10年間、"夜の王"との戦いに備えてきたはずのジョン・スノウは
"夜の王"を倒す者としては機能しなかった。
制作側の話では、"夜の王”を倒す役目をアリア役メイシー・ウイリアムズが負うことは3年前から決まっていたという。
撮影の現実に目を向けるとメイシーのスタント能力はジョン役キット・ハリントンをはるかに凌駕している。
ヴィジュアル効果を考えれば、メイシーを選ぶのが最善ではある。
では、ジョンスノウ=エイゴン・ターガリエンの役割とは一体何なのだろう?
そして、ブランは何なのだろう?
過去・現在・未来の総てを見通しながら、彼は戦に勝つすべを何も伝えず
死すべきものを死ぬままに放っておいた。
ただ見て記憶すること。それが"三つ目の鴉"の役割なのだろうか?
"夜の王"は"三つ目の鴉"に何を伝えたのか?
"夜の王"は"三つ目の鴉"は合体するのか?
疑問は尽きない。
ところで
シオン・グレイジョイの魂の平安を祈ってきた私は、報われるとともに
とてつもない喪失感襲われている。
今週はシオンを語り続けることになりそうだ・・・