海外エンタメ 千一夜物語

もの好きビルコンティが大好きなゲームオブスローンズを中心にゴシップ話も交えて、海外ドラマ・エンタメを一人語り・・・

デナーリス/ジョン・スノウ 約された者たちの情念の悲劇 ゲーム・オブ・スローンズ最終話8.6読み直し

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ゲーム・オブ・スローンズ最終章・最終話に飲み込まれることができず、ボヤキで終わってしまったビルコンティ。なぜそうなってしまったのかを反省しつつ、物語を支えてきた"約された"ヒロインとヒーロー、デナーリス・ターガリエンとジョン・スノウの物語を振り返ってみた。

 

 

エダード(ネッド)・スタークが斬首されサンサが泣き叫んでいた第1シーズン。連勝で勢い溢れる"若き狼"が内側から崩れ落ち、キャトリンの怒りと悲しみで胸がしめつけられたレッド・ウェディング。少年王ジョフリーの充血した眼から命が消えるのが見て取れたパープル・ウェディング。血まみれで猟犬の前に縛り付けられても、危機感も恐怖も感じることができなかったラムジー・ボルトンの狂気。

 毎シーズン名優が力の限りを尽くした演技で魅せる激エモやショッカーに満ちた最終直前エピと、クリフハンガー満載の最終話で視聴の中毒状態に引き込んでくれたゲーム・オブ・スローンズ。

最終シーズン最終話は思い切りパトス炸裂してカタルシスに浸るはずだったのが、私的には第3話でのシオン・グレイジョイの死のシーンをを超えるほどに酔える芝居がなかったということで、気持ちが沈下したままというのがボヤキの根っこにありましたかと・・・

 

 

デナーリス・ターガリエンとジョン・スノウというパラレル

気持ちを立て直して デナーリス・ターガリエンとジョン・スノウを振り返ると、二人は逆方向に走っていく平行線のような人生を送っていましたかと。

 

デナーリス・ターガリエンの子供時代は逃亡生活に荒んだ兄ヴィザリスと二人、現王からの刺客に怯え、ターガリエン兄妹を政治的に利用しようとする権力者の食客として過ごされました。

一方ジョン・スノウは、ネッドの"落し子"として継母のキャトリンに忌み嫌われ、死を願われ、戦時捕虜のシオン・グレイジョイよりも酷い仕打ちをうけて育ちました。

二人共、アウトサイダー、疎まれた子供だったのです。

 

二人の大人への第一歩も茨の刺のようだった。

デナーリスは幼妻として、言葉も通じない荒々しいドスラクのカール・ドロゴに売られ、レイプに耐える毎日でした。

ジョンは、疎まれる生活に耐え切れずベンジェン叔父が所属する"夜の守人"に逃げ場を求めたのだけれど、それが盗人や強姦者を抱えた集団という事実に直面して落胆、剣の練習で持ち前の武勇を発揮して、傲慢な勝利を重ねて嫌われ者になってしまう。

 

ここから、自力更生で二人の巻き返しは始まります。

デナーリスはセックスを武器に変えてカール・ドロゴの寵愛を得て、Khaleesi(ドスラクの女王)として地位固め始める。

ジョンはティリオンの忠告を聞いて、新入りたちを打ち負かして恥をかかせるのを止め剣術指南をかってでて、障害の仲間との友情を気づくことになる。さらに、学匠エイモン・ターガリエンや総指揮官のジョエル・モーモントから深い人生の知恵を授かり、信頼を得ることになります。

 

逆方向に進むパラレル

ここから、二人のパラレルは逆方向に回転し始めます。

 

カール・ドロゴと彼との間にできた赤子の死と引き換えに三頭のドラゴンの母となったデナーリスは、ドスラクを率いるKhaleesiとなり、

虐げられたアウトサイダーだった彼女は、虐げられた奴隷たちを開放し続けて奴隷湾を占領し、七王国のそして世界の抑圧された民を自由へと解き放つ絶対女王としての役割を確信します。

ドラゴンの母デナーリスは果てしない上昇を目指すことになます。

 

疎まれたアウトサイダーだったジョンは、"夜の王"が齎す"冬"の驚異から救うために疎外された野人達を"壁"の内側へと統合します。人望を得て、亡きジョエル・モーモントを継ぐ総司令官に選出されますが、野人統合がキッカケとなり反対派に暗殺されてしまう。

Night gathers, and now my watch begins. 

夜が深まり、我が警備は始まる。

It shall not end until my death.

死の時まで止むことはない。

I shall take no wife, hold no lands, father no children.

妻をめとらず、土地を持たず、子も作らず

I shall wear no crowns and win no glory. I shall live and die at my post.

いかなる冠も栄光も纏うことなく、我が持ち場にて生きて死ぬ。

I am the sword in the darkness. I am the watcher on the walls. 

我は闇の剣、"壁"の守人

I am the fire that burns against the cold, the light that brings the dawn,

冬に燃え盛る炎、暁をもたらす光

the horn that wakes the sleepers,

眠れる者たちを呼び覚ます角笛

the shield that guards the realms of men.

人の王国を守る楯

I pledge my life and honor to the Night’s Watch,for this night and all the nights to come

今宵と来る夜に備え、我が生と名誉をかけて"夜の守人"たることを誓う

"夜の守人"の誓いにあるように、ジョンの目指すものは人の王国を守るための果てしない自己犠牲なのです。

 

 

デナーリスの果たされた予言

 よく似たバックグラウンドを持ち、弱きを救うという共通の理念を持つ二人が出会い、不可避的に愛し合うことになるのですが、

自らの権力を志向する暴力と野望の女王デナーリスと、人々のための自己犠牲に生きるジョンは不可避的に決裂せざるを得ないと言えましょう。

 

そして、そこには二人の約された者を巡る予言の成就が絡んできます。

 

まず、第一に

原作にある、「不死の者たちの館」でデナーリスに下された予言「愛のための裏切り」。

 

これは、ティリオン・ラニスターが兄のジェイミーをデナーリス軍から逃すという兄弟愛のための裏切りから成就し始めましたが、

王都を焦土と化し、ジェイミーとサーセイの無残な死体を目にしたティリオンがデナーリスの狂気と凶暴を確信し

デナーリスを愛し続けるために判断できなジョンを、次の標的はジョンの妹サンサであると説得し

説得されてしまったジョンがデナーリスを刺し殺すことになるという二重の「愛のための裏切り」で予言は成就することになります。

 

さらに、同じ「不死の者たちの館」でデナーリスが見たヴィジョン。

デナリスが鉄の玉座の間に入っていくと王城は破壊されすべての上に塵が積もってデナーリスは鉄の王座に座ることができない。玉座の間からでたデナリスを待っていたのは、雪原と今は亡きカール・ドロゴと生むことができなかった息子というもの。

 

前半は、ジョンとデナーリスが最後の逢瀬を過ごすシーンの前に正確に再現されました。

後半は、ドロゴンによるデナーリスの救済です。ドロゴンはデナーリスの息子であり、カール・ドロゴに代ってデナーリスを守ってきたドロゴの分身。三匹のドラゴンの中でもドロゴンこそが、ダニーの守護神でした。

ドロゴンはデナーリスを何処へ連れ去ったのでしょう?ターガリエンの故郷であるヴァリリアか?ミーアにある"光の王"の神殿か?

 

後者だとしたら、デナーリスの蘇りも考えられます。

 

ただ、物語の展開として一つ気になることが・・・。

デナーリスは出会った男たちを虜にする、一種のファムファタールという位置づけもあります。

"愛してくれないなら、恐怖に震えさせてやる"

裏切られた女として民衆にも復讐を企ててしまった今となっては"魔性の女"確定と言えましょう。

 

ところで、男性原理が"魔性の女"を死によって救済するというナラティヴは、初代"魔性の女"小説『マノン・レスコー』以来連綿と続く男のロマンというか幻想。

 

このパターンの幻想はいい加減に廃棄してもらいたいと考えるビルコンティです。

 

 

"約された王子"と"光をもたらすもの"の成就

 この予言については過去にも書いていますが、

 これも、ある意味成就したと言えましょう。

 

闇を倒して七王国へを未曾有の繁栄へと導く戦士アゾール・アハイの生まれ変わりである"約された王子"と彼が闇を倒すための剣"光を齎すもの"。この両者をジョン・スノウは体現していたと言えます。

 

アゾール・アハイは30夜をかけて剣を鋳造しますが、冷却水に入れると剣は砕けてしまいます。

 

冷却水を冬であり氷の象徴と考えると、それは"夜の王"の象徴と言えましょう。"夜の王"との戦いでジョンは機能不全でした。

砕けてしまった"光を齎すもの"です。

 

次に50夜をかけて鋳造し冷却のためライオンの心臓に突き刺しますが、やはり砕けてしまいます

 

ライオン=ラニスターの紋章です。ラニスターとの戦いでもジョンは機能不全、砕けてしまった"光を齎すもの"でした。

 

3度目には心も重く、100の昼夜をかけて鋳造し、愛妻ニッサニッサの心臓に突き刺すことで剣は仕上がりました。

 

愛するデナーリスの胸をジョンの剣は貫きました。"光を齎すもの"はここに完成したのです。

 

デナーリスを殺めることで、ジョン・スノウの"約された王子""光を齎すもの"の義務は果たされたのです。

 

 

"夜の守人"の誓いの重み

"約された王子"は王ではあり得なかった。これが、ジョン・スノウの物語としてのゲーム・オブ・スローンズの結末です。

 

何故なら、ジョンはnow and always(今もいつでも)デナーリスを女王とすると

彼女の下僕であることを誓ってしまったのですから。

ジョンがこれほどにデナーリスを愛していなかったら、彼の行動はもっと抑制されていたかもしれない。

ジョンのデナーリス殺しは、人々を守るためのものであり、同時に激情の犯罪とも言えましょう。

 

ネッドが死を持って示したように

誇りあるものが"誓約"を破ることは許されない。

破ったらジェイミーのように"成約破り"の汚名が一生ついてまわります。

 

さらに、彼は"夜の守人"として"人の王国を守る楯"

妻なく、子なく、領土も冠もなきものとして誓約を立ててしまったのですから。

 

スターク家を守るために、人の王国を守るために放棄していた誓約ですが

それが果たされた今、

彼が戻るべき場所は七王国ではなく誓約をたてた"壁"なのです。

 

 

 

 

"約された者たち"は予言を成就し言霊に縛られるしかない。

二人の主人公にとって、酷く苦い結末でした。

 

この結末がジックリ味わえるスピードでエピソード展開した欲しかったと思います(ヽ(´Д`;)ノ

 

 

 

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