エンタメ 千一夜物語

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ブラン・スタークの王座昇格人事は適正なのか?ゲーム・オブ・スローンズ 最終話ネタバレ

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怒りを解き放ったデナーリス・ターガリエンがジョン・スノウに成敗されるって語ってはや半月。思った通りのエンディングでウレシイかというと、ちっともウレシクない!

消去法で王座に就くのはブラン・スタークという推測はあえて控えておりました。

だって、心地よく期待を裏切って欲しかったから。

このウレシクなさを、よく考えてみました。

 

 

つじつまが合わないデナーリス周辺

軍勢の規模がまちまちじゃないですか?

デナーリス・ターガリエンが軍事独裁政権で粛清しまくりってのは頭で納得できてたんですけど、その過程に時間をもっとかけて心で納得できるようにして欲しかった。

ってのは、番組ファンとして強く思っとります。

 

しかし~~~

第4話ではひと握りほどになっていた"穢れなき軍団"が第5話ではそこそこの軍勢になり、第6話ではナチスの盛期みたいな大軍勢になってたのは何なんでしょう?

ヒトラー化してる最終話のデナーリスには、お似合いの大軍勢ではありますが・・・

亡者の軍団で半減し、ユーロンに船を撃沈されてさらに減少してたのではないのでしょうか?

この巨大軍勢があったのに、第4話でサーセイに脅しをかける時、多勢に無勢と見せつけなかったのでしょう?

彼らが暴れてたのは市街の一郭でデナーリスはドロゴンと二人だけで大殺戮をしたみたいな展開だった第5話、振り返ると違和感があります。

 

ドスラクも同様です。

 

ゲーム・オブ・スローンズならではの細部へのコダワリ、何処へいっちゃたのでしょう?

 

ジョンとティリオンは、何で生きてるわけ?

 

まず、ティリオン。

「ラニスターに組みした者は皆殺し」じゃなかったんですか?なのにティリオンは、そこそこ居心地の良さそうな部屋に閉じ込められてるだけ。

元"女王の手"だからですか?

 

ジョン・スノウがデナーリスを殺めなければならない運命だったのは分かってましたけど、ドロゴンは何故ジョンを焼き殺さなかったのか?

ドラゴンは人知を超えた知恵があるのでデナーリスを愛するジョンではなく、デナーリスを狂わせた"鉄の玉座"を焼き溶かしたのだって説が多いですが

だったら、何で王都大虐殺を繰り広げたんでしょう?

 

ドラゴンは不可知ってのは確かですけど、じゃあ、皆殺しモードのグレイワームと"穢れなき軍団"は何してたんでしょう?

独裁者が倒れた時、軍部が政権を握るってよくあることじゃないですか?

 

最終的には集結した七王国全軍にかなわないとしても、"女王殺し"を成敗してさっくりミーリーンに戻るってのはありでしょう。

グレイワームは命じてもらわないと行動できない、優柔不断な総司令官だったんですかね?

 

グレイワームに自己抑圧癖があったとしても、ドスラクにはないでしょう。Khaleesi(ドスラク語の女王ですね)の敵、ぶっ殺せって流れになるのが自然じゃないですか?

 

ティリオンとジョンが生きてるのは「いい者」の主役だからとしか思えません。それって、ゲーム・オブ・スローンズじゃありません。

 

「いい者」の主役は死なないなんて、ごく普通のTVドラマですよ(汗)

 

 

ブラン・スタークの王位就任は適正?

象徴的には、スグレタ結末

"鉄の玉座"は強大な権力の象徴。強大な権力は正しく使われれば大変有効ですが、そうなることは少なく、そこに居座る者、追い求めるものを腐敗させます。

 

エイリス・ターガリエンは狂い、ロバート・バラシオンはラニスター家の富を蕩尽し、サーセイは疑心暗鬼の恐怖にかられて大罪を犯し続けました。

"鉄の玉座"を追い求めたデナーリス・ターガリエンは、狂った独善を振りかざす女王になってしまった。

 

もともと、嘘八百の伝説だった"鉄の玉座"。

一応、民主主義の恩恵を受けているアタシには、ないほうが良いもの。

マクロに考えると、ドロゴンの怒りの炎で溶かされて当然の存在です。

 

そして、強大な力を象徴する"鉄の玉座"に座れなくなった後に

王座に就くのは、知識というもの以外には力を持つことがない

下半身が萎えて、車椅子に座るしかない少年といのは

ケルト神話の漁夫王っぽくて

まことに、詩的正義というしかないものであります。

 

私がブランが王になると考えていたのも、ここがエンディングのキモと考えたからでした。

 

 

現実的に考えると、疑問ありあり~~

 

ブラン・スタークという存在がティリオンの言うように王として適材なのでしょうか?

・内省的な存在で攻撃的でないから権力を乱用しない

・世継ぎを作れないから、世襲制による負の連鎖を断ち切れる

・神木と合体すれば長く生き続けて政権も安定するし

という利点は、確かにあります。

 

しかし、物語を紡げるから王に相応しいというのは、ファンタジー過ぎます。

 

民衆が求める王、国家元首というものは

その人に従っていけば国民が幸福になり得るというヴィジョンを提示できる人

もしくは、そのような幻想を与えられる人物ではないでしょうか?

 

ユリウス・カエサルからヒトラーまで、革命的な国家元首は

ただの記憶の集合体ではなく、その時点では説得力ある理念の広告塔なのです。

そういうヴィジョンがブランにあるのでしょうか?

 

さらに、ブランは全き善なのでしょうか?

過去・現在・未来を見通せる視線が捉える未来は不変のものなのでしょうか?

 

リトルフィンガーやサンサの"カオス理論"にもあるように

未来というのは不確定な出来事が影響しあう連鎖ではないでしょうか?

ごくわずかな条件の変化が、劇的な結果の違いに繋がるのです。

ブランは、その様々な連鎖を総て見通せているのではないでしょうか?

 

であれば、

ジョン・スノウがデナーリス・ターガリエンをスターク的な倫理基準で避けることなく愛情を持って接するといったわずかな条件変化で

王都の民衆大虐殺に繋がらない未来を導けた可能性もあります。

 

・怒れるサムウェル・ターリーにジョンが本来の王位継承者であることを伝えさせた。

・バカ正直なジョンは、親族に真実を打ち明ける。

・サンサはジョンの王位継承を画策する。

 

この連鎖はアタシのような素人にも容易に想像がつくことで、ブラン自身がデナーリスを疎外して狂わせ、ジョンを"女王殺し""親族殺し"に仕立てて追い詰め、自分が王位に就くことを知っていた。その未来を望んでいたということになるのではないでしょうか?

 

どうして彼が王位に就く必要があったのか?

それが、一番良い選択肢だったのでしょうか?

他の条件付けは、さらに大きな悲劇を生むのでしょうか?

 

デナーリスが穏便に王座交代したとしたら・・・

確かに、食い詰めた貧民の流入で王都は不潔と食糧難に喘ぎ、いつ、疫病が蔓延しても不思議ではない状態ではありました。一旦伝染性の疫病が猛威を奮い出したら、七王国全土が死者の山になるのは必至です。

穏便な王座交代では、ここが整理されません。

 

だからと言って、ダニーの大虐殺で人口調整したのだったら、

ブランは他の為政者よりも巧みでタチの悪い政略家と言えましょう。

 

それとも、三つ目の鴉には未来を操作してはならないのでしょうか?

人為的操作によるパラドックスが時間軸に生じて七王国が崩壊するとか?

 

 

そして、縁故主義

サンサ・スタークが"北"の独立を訴えた時、ブランは簡単に承知してしまいました。

あれは何だったのでしょう?

 

あの場所には、"鉄の民"の女王であるヤーラやドーンの王子もいました。

パイクもドーンも、王都や"北"とは全く異なる文化・慣習、道徳基盤を持つ土地柄。"北"以上に独立が相応しい領土です。

 

ブランは七王国を直接支配するのではなく、文化の異なる地域の独立を認めた連合王国を築こうとしていたのでしょうか?

 

そのようには見えません。

いくら戦功があるからといって、未来を構築するヴィジョンなしに"北"の独立のみを認めたら、それは姉・弟の縁故主義としか言いようがありません。

 

それが"三つ目の鴉"のすることでしょうか?

 

最後に笑ったのはティリオンなのか?

ブランがローマ教皇のような衣装で座っているのも気になります。

おまけに、ブランは王冠を戴いてはいません。

 

小評議会でも、意思決定者として指揮しない。

 

よく考えると、

王となったブランの周囲には権力を象徴するものは何もない。

彼は"三つ目の鴉"として総てを見守るだけの

象徴天皇のような存在として機能していくのでしょうか?

 

考えてみれば、ジョンによるダニー殺しを操作したのはティリオン

物語の語り手としてスローガンを掲げるのに最適なのもティリオン

鎖に繋がれてるのに、ブランの王位後継を指揮したのもティリオン

象徴天皇の下で実質上の最高権力振るうのもティリオン

 

弁舌の才で過酷な七王国を生き抜いてきたティリオン。

彼であれば、連合王国という理念を売ることも可能です。

 

"三つ目の鴉"はティリオン・ラ二スターに王国経営をさせるために

象徴的王位に就いたのでしょうか?

 

であれば、すべての流れが納得できるのですが

それが分かるようにストーリーを組み立てて欲しかったです。

 

小評議会のメンツが不合理

バカ王ロバート・バラシオンの治世が長く続いたのは、スグレた実務家を揃えた小評議会があったからこそ。

 

バリスタン・セルミーは経験豊かな武将でしたし、大蔵大臣のリトルフィンガー、情報省のヴァリスの優秀さには比類ないものがありました。

 

王の手としてティリオンが優れているのは認めます。ダヴォスの海運大臣は必要なポジションなのでしょうか?

理想家肌のブライエニーとサムは機能するのでしょうか?

だいたい、ブライエニーはサンサに忠誠を誓っているのに、何故ここにいるのでしょう?

多大な復興資金が必要となるこの時期にブロンが大蔵大臣というのは、無理がありすぎです。それ以前に、彼に七王国の穀倉地帯であるリーチの経営ができるのでしょうか?

 

学匠パイセルは別として、ロバート・バラシオン時代と比べると、弱体すぎる小評議会です。

 

視聴者に人気の高いキャラを要職につけて、めでたしめでたしとするファンサービスとしか思えません。

 

 

締め

 

現実世界の政治を反映していたから魅力的で切実だったゲーム・オブ・スローンズのエンディングとしては、組立がお粗末ではないでしょうか?

 

キャストからも、唐突な終結に対する不満が漏れているような昨今。

HBOが制作を指揮するデヴィッドとダンに提案したように

せめて、もう1シーズン欲しかったというのは贅沢すぎるでしょうか?

 

だいたい、復興・繁栄の希望を象徴する人物が欠けているではないですか!

このお話は、下「タイレル家」の記事で、ジックリさせていただきたいかと・・・

 

 

 

www.biruko.tokyo

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