海外エンタメ 千一夜物語

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デナーリス・ターガリエン的恐怖政治の始まり? se8-ep5先読みネタバレ ゲーム・オブ・スローンズ 最終章

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やらかすんだろうな、やらかすんだろうなという視聴者の期待を裏切ることなく、やらかしてくれたデナーリス・ターガリエン。さすがに狂王エイリスの娘です。って、感心してる場合じゃない!

恐怖で始まったデナーリスのキャラのこれまで、ターガリエン的統治というものがどうなるか考えてみました。

 

 

デナーリス・ターガリエン的独裁の行くえ

ターガリエン気質というもの

ゲーム・オブ・スローンズの偉大さは、取りも直さず原作者ジョージ・R・R・マーティンの偉大さであると考えているあたしです。

甚大なキャラ数とプロットラインを抱えた超大河シリーズであるにも関わらず、細部にまでリアリティがあり、要素が複雑に絡み合って無駄というものがない。さらに、ファンタジーシリーズでありながら、誰もの人生のなかでも起こりうる悲劇として実感できる原型的シンボリズムが豊富である。

と、バルザックなみの"人間喜劇"なんですわ。

 

で、七王国を代表する名家のそれぞれが人間の代表的気質を現しているというところ、非常に気に入ってます。

 

例えば、

ラニスター家は強欲(金でんがな、金)

スターク家は傲慢(誇り高く克己心に富んでいる分、他家を過小評価する傾向有り)

バラシオン家は怒り(何度反乱を起こせば気が済むのか、遂には家内で殺し合い)

タイレル家は享楽(お金も文化も美も美味も、なんでもありな七王国のフランス中華思想)

ボルトン家は残虐(これは説明不要ですかと)

てな感じですが

 

ターガリエン気質は、悲しいことに狂気でんがな。

狂王エイリスは元より、ヴィザリスの妄想、スレスレなレイガーのロマンチシズムとつんのめり気質、困った一族です。

 

「父エイリスのようにはなりたくない。アタシは虐げられた者たちの開放者なの!」と、言い張っていたデナーリスですが

心から愛してくれたジョラー・モーモントを失い

命懸けで北を守ったのに感謝もされず

我が子レイガルを屠られ

信じあっていたミサンディをサーセイに殺され

側近のヴァリスに全面的に裏切られ

愛に生ききれないジョン・スノウに落胆し

 

とうとう狂気のターガリエン気質に屈して

罪のない王都の民衆をドラカリス(ドラゴンファイア)で大虐殺~~~

 

ですわね。

 

大失墜に向けたデナーリス・ターガリエンのキャラ展開

 ジョージ・R・R・マーティンが描くキャラクターというものは、艱難辛苦に苛まれ葛藤の末に今ある自分にたどり着くわけです。

 

まずはラニスター家の人質として、次は味方のはずのリトルフィンガーの裏切り、ラムジー・ボルトンの嫁として苦しみの中を這いずり回って一流の政略かとなったサンサ。

 

脚の自由を失い、守ってくれる友をどんどん死なせ、人間らしい喜びも失いつつ"三つ目の鴉"になったブラン。

 

復讐という燃える一念だけを頼りに恐怖を抱えて逃げ惑い、視力を奪われ、アイデンティティを捨てることを強制され、ウェイフという刺客に追い回され、何度も腹を刺されて死ぬ寸前までいき、超一流の殺し屋となったアリア。

 

皆、大変な思いをして今がある。

 

デナーリスも流浪の王女として暗殺の恐怖に耐え、カール・ドロゴの嫁として売られて、辛酸をなめてきた。

 

ところが、カール・ドロゴを失い、ドラゴンを得てからのデナーリスは上昇あるのみ。

窮地に陥っても彼女を女として愛するジョラー・モーモントやダリオ・ナハリス

もしくはカールの身代わりのようなドロゴンが助けに来てくれる。

挫折ということを知らないんですな。

 

さらに、叱ってくれる人がいなかった孤児のデナーリスは

帝王学を学ぶことができなかったんですねえ。

 

タイウィン・ラニスターがサーセイに言ってましたね。

「女だからではな自己抑制がないからお前は統治者に向かない」的なこと。

ルース・ボルトンはラムジーを

「恐れられるだけでは統治できない」と叱ってました。

こういうことって、その時は反発しても後になって成長を助けてくれるものです。

 

他に帝王学を学ぶことなく強大な権力を手にした人物と言えば、ジョフリー・バラシオン。サーセイという怪物ママに庇われきって自分のすることは全部正しいと思い込んでいましたね。

ところが王座についてからも、国政の実験は内閣&ティリオンにあるので本当の意味での支配からは阻害されている。

自分が権力を振るえる範囲での、彼の非道っぷりは目に余るものがありました。

 

叱られたことのない、挫折したことのない人間が

自己抑制を学ばないで権力の頂点に立ったら

権力を乱用して墜落するしかない。

という展開になるわけです。

 

 

デナーリス・ターガリエンは勝利したのか?

ドラゴンファイアが一万都市を焼き尽くす!

映像としてはエキサイティングではあります。

 

この大破壊と簒奪行為

何故、怒りの根本因であるサーセイに立ち向かわず

通りすがりの人々を大虐殺するのか?

これじゃあ、"クリミナル・マインド"でプロファイルされるシリアル・マス・マーダラーと何も変わりません。

 

徹底した破壊行為による侵略は 

瞬間的には勝利しても長続きはしませんよ。

サンクト・ペテルブルグはナチスに屈しなかったし

ガザ地区のパレスチナ人は戦い続けるわけです。

ちっぽけな民衆って、侮れないんですよ。

 

暴力による制圧は、独裁と軍事恐怖政治につながるしかない。

ロベスピエールは一年もたなかった。

アル=カッザーフィーの統治は長かったけれど、結局は暗殺された。

 

スターリンはロシア革命という大義名分とソヴィエト共産党という強大な組織を掌握していたので、自身は天命を全うしたわけですが・・・。

 

誰もが納得できる大義名分がないと、独裁者は長続きしないのです。

 

私はチェーザレ・ボルジアがイタリア統一に向けて用いた効率よく優雅な奸計と戦略を評価するものではありますが、法王の"落し子"である彼には大義名分がなかったのですね。

 

「一族の敵を討つために、王都の人民虐殺」ってなんの大義名分もありません。

カトリーヌ・ド・メデイシスの"サン・バルテルミの虐殺"以下ですよ。

 

古代ローマ帝国に法外な領土拡大と延々と続く繁栄をなし得たのは、

●道路・水道というインフラ整備から戦争を始め

●裏切り都市は殲滅したが、無血開城した都市には穏便な対策をとり、市民権をどんどん与えた

という合理的な、優れた組織化があったからこそ。

 

降伏の鐘がなってもデナーリスは殺戮をやめなかった。

それが引き金になって、自軍の兵士は単なる虐殺者・強盗・強姦者に変貌した

盟約を守らない君主を、他の領主たちが信じて従うことがあるでしょうか?

 

デナーリスは玉座に座るとしても、壊滅した都市の空の玉座に座ることになるのですね。

彼女が次に望むものは、ティリオン・ラニスターの処刑とジョン・スノウ粛清でしょう。そうなると、側近として残るのはデナーリスと同じくらい狂っているグレイワーム。

 

戦争にしか向かないバカ王ロバート・バラシオンの天下が続いたのは、優秀な政治家タイウィン・ラニスターを後ろ盾にして、適材適所の内閣がいたからこそ。

デナーリスにはそれもない。

 

 

勝った瞬間から負けが始まっている狂女王デナーリス。

刺客は優柔不断なジョン・スノウなのか?最強アリア・スタークなのか?

ですかね。

 

 

 

内なるデーモン(悪霊)に滅ぼされる人々

っていうのが、第8シーズンの核かなと思います。

ジョラー・モーモントのデーモンは叶わぬ恋。シオン・グレイジョイは深すぎる悔恨で殉教したと言えましょう。

そして、今回の主だった死者たちは・・・

 

中毒患者の死、ジェイミー・ラニスター

ジェイミーはサーセイという毒に溺れた一生でしたね。

リハビって厚生したはずの中毒患者がツルっと再発するようにサーセイの元に戻ってしまいました。

 

デナーリス軍から逃してくれたティリオンの切なる願い、降伏の鐘をならすなんて少しも考えない。自分とサーセイだけが大切なのね。

 

ブライエニーとの一夜は何だったのでしょう?

実は、ブライエニー/ジェイミーはゲーム・オブ・スローンズのファンダムでは最大人気を誇るship(ペア)。ファンサービスだったんでしょうか?

ファンサービスはコミコンだけで止めておいて欲しいですよ(汗)

 

ユーロン・グレイジョイとの果たし合いはなんだったんでしょう?難破したはずのユーロンが何であんなに元気だったんでしょう?

満身創痍で失血死しても良いはずのジェイミーが、サーセイを庇ってエスコートしてけるのも妙ですわ。

一人の女を巡った真の愛の証明のつもりかもしれませんが、お粗末ですね。

 

そして、足弱な女に戻っちまったサーセイ。ガッカリです。

あれだけ人を殺しておいて、自分の番になるとこの体たらく。

 

オレナ・タイレルを見習って、死に際に毒を放って欲しかった。

 

レナ・ヘディは好きなんですけど、この展開だと

あんたたちって迷惑なのよね、勝手に死んでなさいって感じです。

 

復讐に生き、死ぬしかなかったハウンド

幼い頃、マウンテンこと兄グレゴールに火にくべられたトラウマから立ち直れず

ジョフリーのお守り役として意にそまぬ殺人をしてきたことを後悔しながら

改悛している自分を素直に認めることもできず

醜くなってしまった容貌から誰にも愛されないと思い込み

意地悪な皮肉を言い続けるのだけれど、人一倍情に厚い

ハウンドことサンダー・クレゲイン。

 

「いじけるなよ、皆、ハウンドが大好きなんだよ」と、

声をかけたくなる奴でした。

 

復讐に目がくらむアリアを

「俺みたいになっちゃいかん」と諭して赤の城から脱出させた男気。

泣けますねえ。

 

マウンテンは焼き殺すしかないけど、デナーリスとドロゴンに任せとけばいいのに

あんなに恐れていた炎の中に兄共々飛び込んでの相討ち。

 

人類を救うという大義名分もなくなって

殺し屋として生きてきた男の最後のケジメですか・・・

悲しいねえ。

 

おまけのうように殺されクアイバーンは笑えましたが(汗) 

 

 

ヴァリス、大義に死す

これまでヴァリスは常に、誰よりも冷徹に現実を見据え、どんな状況でも民衆にとってより良い方法を模索してきました。

 

そんなヴァリスがデナーリスは統治者に値しないと言ったら、値しないのですよ。なんで、皆、ヴァリスを信じないんだろう。

 

そんなヴァリスの内なるデーモンは「民衆のために最良の王を玉座に据える」という大義。

そのためにデナーリスを裏切ったヴァリスは、私にとってはゲーム・オブ・スローンズ最大の英雄です。

 

捕縛される寸前に指輪を外しましたね。

あの中にデナーリスを殺害する毒が入っていたのかもしれない。

そうです。戦争するより独裁者を毒殺する方が民衆にとってはありがたいことです。

ヴァリスは正しいのです。

 

ティリオンのチクリを知った時も泰然自若。

「私が処刑に値することを願っていますよ。本当に」

「私が間違っていることを願ってますよ」

と語って静かに処刑を受け入れたヴァリス。

 

ジョン・スノウが鉄の玉座の正しい後継者であることを伝えるヴァリスの鴉メールが少しでも多くの領主に届き、皆々の眼を開きますように・・・

 

見事な、見事な最後でした。超リスペクトです♥

 

 

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