海外エンタメ 千一夜物語

もの好きビルコンティが大好きなゲームオブスローンズを中心にゴシップ話も交えて、海外ドラマ・エンタメを一人語り・・・

ハンニバル2.12 孤独な似た者同士の愛憎 『止め椀』深読みネタバレ

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「ハンニバルを捕まえてやる、殺してやる」なんて言いながら、いつも結局実行できないウィルを観察し続けた第2シーズンも残すところあと2話。今回もいろいろ妄想してるようですが。どうしてこう、ウダウダしちゃうのか、ウィル・グレアム?ってとこを、考察してみました。

 ※「普通こんな会話しないよね」なセリフやアートすぎなイメージや音楽も、回が進むほどに重要な意味を持ってくるので、詳しく掘ってます。 

 

 

殺人幻想に酔うウィル

 ハンニバルの心療室。

メイスン・ヴァ―ジャーに「ハンニバルがあんたを殺したがっている」と吹き込んできたウィルが、「僕の行動の意図がわかりますか?」と、得意げに尋ねます。

「我々はお互いの精神状態を理解している。似た者同士なのだ。だから、お互いを欺けるのだ」という意図の返答をするハンニバル。

「あなたを欺いたんじゃない。首根っこを掴んだだけです」

 I was curious what would happen. (殺意を伝えたら)どうなるか、興味があった。

と、コピーキャット殺人を犯した時のハンニバルの動機と全く同じことを言うウィル。ヴァ―ジャー殺害の手先としてウィルをハンニバルが使おうとしていたことを察して、先手を打った。やられたことは、ソックリそのままやり返さないと気がすまないのですね。厄介な男です。

メイスンが無礼であると考えているハンニバルに、彼をカニバルる気があるかと、ウィルはさらに質問を進めます。

Whenever feasible, one should always try to eat the rude.
可能な限り、無礼者は食さねばならない。
いつもながらの一般論で交わすハンニバル。一緒にメイスンを食べる意志を示すウィル。こんな押し問答では、カニバル殺人の証言をとったことにはなりません。

何が起こるのを期待しているのかと、ウィルに眼をとじて想像させるハンニバル。

ウィルの脳裏には、拘束衣を着せて縛りあげられ、人食い豚の迷路の上にウィンチ仕掛けのロープで吊るされたハンニバルが浮かびます。殺意に満ちたウィルを満足気に、慈愛に満ちた眼差しで見つめるハンニバル。その喉をウィルがナイフで掻き切ります。頭から返り血を浴びるウィル。無表情に変わったハンニバルがぶら下がるロープを、人食い豚の迷路に押し下げていくウィル。

「何が見えたかね」というハンニバルの問いには答えず、ウィルは満足そうにほくそ笑みます。

 

デコられた死体や相手を傷つける行為が求愛の贈り物のように表現されてきたシリーズだから、2人の見かわす視線とかが意味深なんで残酷な殺人幻想なのに、妙にエロ。

「ウィルはハンニバルの体液を浴びたんだ」なんて、ファンミで嬉しそうに語っていた製作者のブライアン・フラー。あなたの意図はミエミエですよ!って言いたくなる視聴者でした。

 

ヴァ―ジャー兄妹の殺意

ハンニバルのセラピー。 マーゴの子宮を切除した自分の残酷な仕打ちに関して、「あんたは家庭の事情に介入した。僕を破滅させたんだ」と、ハンニバルをなじるメイスン
やっぱりねえ、メイスンは自分の悪事を他人のせいにする卑怯者なんですね。

その言葉尻を捕えて、「夏のキャンプに来た恵まれない子供たちを(虐待で)破滅させて、何を学んだんだね?」と、聞き返すハンニバル。

 「熱心な聖書の読者として、受難を学んだ」平然と答えるのメイスン。ハンニバルの机に脚を上げたり、態度も傲慢。懲りないサディスト野郎です。

God's choices in inflicting suffering are not satisfactory to us, nor are they understandable, unless innocence offends Him.

無智が神の逆鱗に触れた場合を除いて、受難を引き起こす神の選択に我々は満足できないし、理解も不可能だ。 

これもまた意味深なハンニバルのセリフ。自分を神に例えてきた彼ですから、他者の痛みを理解することないメイスンに、痛みを与えようとしているのが推察できますかと。

マーゴの幸福が大事なのではと諭すハンニバルにご自慢の豚用ナイフを突き付けて、「突き刺して脂肪を測る」と脅しても何の反応も得られないことに苛立ったり。

「あんたとあの精子提供者が何を企んでるにしろ、僕の方が上手」とハンニバル愛用のの椅子の肘掛けにナイフを突き立てて、顰蹙をかったり。
怖い者知らずの傍若無人っぷりに、残酷な受難の予感が高まります。

 

一方、下腹部に子宮摘出の傷跡も痛々しいマーゴもハンニバルのセラピーに。ウィルも来てます。
「腹腔鏡手術もできたのに、メイスンは傷をわざと残させたの」と、子どもの産めない身体になって、メイスンの残虐さに怖れをなすマーゴに
「彼は君に焼印を押したんだ」なんて、マーゴが家畜扱いされてるみたいに、シレっとほのめかすウィル。
マーゴのセラピーにはメイスン殺しが一番だと考えているハンニバルは
Mason wants you to know this can never be undone.
メイスンはもう取り返しがつかないと、君に理解させたいのだ
とあおり、ウィルが続けます。
Mason can be undone. でも、メイスンを取り消すことはできる。
まるで、2人してマーゴを殺人者に仕立てようとしているようなの息の合いっぷり。

意気消沈してメイスンの完全勝利を認める彼女へのハンニバルの言葉は

This won't make you human, Margot, so much as give you the abilityto make yourself human and move on.
こんなことで君が人間らしくなるわけでもないし、人間らしくなって先に進む能力が与えられるわけでもない。

ぱっと聞くとマーゴを貶めてるの?って思いますが、ハンニバルが人間らしさを評価しているわけではない、マーゴの中に見出した怪物に可能性を見出していたことを考えると、より理解できるでしょう。弱気になって諦めず、メイスンを殺して自らを貫けというお叱り。もちろん、ウィルに向けた言葉でもあります。
なので、ウィルは反論します。
Moving on isn't just a distraction... ...it's a rebuke.
先に進むのは気晴らしじゃない。...叱咤だ。
Show your brother how strong you are.
兄さんに君の強さを見せつけろ。奴を乗り越えて生き抜くんだ。

突き放すように言うウィル。ハンニバルからの影響を脱して、自分は生き抜くと言いたいのでしょう。

 

言葉だけ聞くと、ウィルがマーゴを励ましてるみたいですけど、この2人は視線を合わせることもないし、どちらもハンニバルに向けて言葉を放ってるんですね。特にウィルは、ハンニバルに負けないって主張し続けているわけです。
ウィルとマーゴの関係って、かなり奇妙です。マーゴが妊娠して以降、ハンニバルを通してしか言葉を交わしていないんですね。マーゴはレズビアンだし、ウィルは精子提供者以上の存在ではない。ウィルは騙されたわけなので、当然マーゴには冷たい。マーゴに語りかけるように見えて、自分とハンニバルの関係のことしか考えていない。

とはいえ、一旦は生まれてくる子供の父親になることを受け入れたわけなんだから、ここまで冷淡でいいの?って思います。結局、自己中、自己愛男のウィルなんですね。

 

ジャックの苛立ちとべデリアの再登場

「自分は優秀な釣り師」なんて言って、ハンニバル捕縛の囮捜査の許可を得たウィルがちっとも成果を上げてないことに苛立ち始めたジャック
おまけに、ウィルは 「ハンニバルには、学ぶべき独自のスタイルがあるんだ」なんて称賛するような発言さえする始末。

知ってるわよ。あんたはハンニバルと一緒にいたいから囮捜査なんて口実つくってるんでしょ。と、視聴者でさえここまでくると見透かしてしまします。

ランドール・ティア―殺害(過剰防衛)や死体損壊、フレディ・ラウンズの偽装殺人まで容認してきたジャック。成果が上がらなければジャックの首が飛ぶのも間近でしょう。それは怒りますよ。

メイスン・ヴァ―ジャー殺しをするようハンニバルに心理操作されてるけど、反対にハンニバルが殺すよう仕向けている。実行したら逮捕する」なんて、マーゴ関連で自分が引き起こした醜聞が偶然齎した現状だということを隠して、逮捕計画を語るウィル。
またも殺人計画に付き合わされることになり、困惑するジャック。囮捜査の名目でハンニバルとじゃれ合うために、ジャックに嘘つきまくりとしか理解できません。

 

付き合いきれないジャックは、別の証人も用意してました。それは、ハンニバルの精神科医であるべデリア・デュ・モーリエ
ハンニバルの危険性を知り尽くしている自分が殺害される可能性を怖れて身を隠していたべデリアを探し出したのですね。

薄物の赤いブラウスを着て、最初は殊勝気、不安そうに訊問室に座っているべデリア。ハメられて孤立無援で精神病院に収監されていた時に訪れ「あなたを信じるわ」と言ってくれたことに、ウィルは礼を述べます。良好な協力関係が築けるかと思えたのですが、そこは曲者の2人。

証言の代わりに訴追免除を得たこと知った辺りから、べデリアは腹の据わった態度になっていきます。

心療中にハンニバルの元患者に襲われた時に「彼を殺したわ。正当防衛だと思ってたけど、あれは殺人だったの。私はハンニバルの影響下にいたのよ」なんてかすかに笑みを浮かべて告白たりします。お見事です、べデリア。殺人罪の訴追免除のために、あえて見つかったのね。と、納得する視聴者。
「脅迫されたのですか?」と聞かれると、「ハンニバルは脅迫なんてしない。説得するだけよ」と、自信たっぷりに語ります

だんだん不愉快そうになるウィル。自分が一番賢くFBIすら出し抜き、ハンニバルを一番理解していると言いたげなべデリアに、ウィルの嫌悪が込み上げてきたようです。

誰かを殺すように説得されたんじゃないかしら?あなたが愛する人を。それしか選択肢がないって思いこませられるのよ」と、見透かしたように語るべデリア。

ここで、考え込むウィル。第2シーズンの間中、ウィルが殺さなければならない愛する人物は誰なのか?多分、微妙な疑念がウィルの脳裏をよぎったはずです。

ハンニバルは自分に酔うことがあるでしょ。高貴な趣味と奸智を自画自賛してね。気まぐれだし。そうなった時に、彼を逮捕できるわ」と、ハンニバル通として大手をかけるべデリア。べデリア対ウィルのハンニバル通勝負、詰んだって感じです。 

 

してやられて悔しそうなジャックと2人だけになると、べデリアの本音が出てきます。
FBIは私を守れたかしら?ウィル・グレアムは守れなかったでしょう。孤独ほど私たちを脆くするものはないのだから
またもお見事。べデリアは、孤独なウィルがどうしようもなくハンニバルに惹かれてしまうことに気づいていたのですね。ハンニバルがいるからウィルは孤独にならないと。

ハンニバルはウィルが殺人者だと信じているわ。あなたはどうかしら?」
べデリアはまだ、フレディ殺しが偽装だと気づいていないのですね。
「私が知る限りでは、ハンニバルの唯一の罪は影響力。...グラハムさんは自分で自分が分かっていないようね。ハンニバルは理解しているけど

ハンニバルが恐るべきカニバル殺人鬼であるということ以外は、総て見切っているべデリア。優秀な精神科医です!

 

孤独な似た者同士

「メイスン・ヴァ―ジャーという問題を解決するのは、我々双方にとって好都合。問題解決は狩りだ。その野蛮な喜びのために我々は生まれたのだ。喜びを共有しよう」と、涼しい顔ででウィルに共同殺人を提案するハンニバル

「あなたは共依存を育もうとしている。そうやってアビゲールを手中にして殺したんだ」と、悩まし気にウィルは抵抗します。

I bond with Abigail; you take her away.
僕がアビゲールと絆を深めたら、あなたはあの娘を取り上げた。
I bond with... barely more than the idea of a child; you take it away.
子供っていう考えを漠然と持ったら、それも取り上げた。
You saw to it that I alienated Alana, alienated Jack.
アラナやジャックを遠ざけさせた。
You don't want me to have anything in my life that's not you.
人生であなた以外のものを僕が持つのが、あなたは嫌なんだ。

「君にとってのの最善を望んでいるだけ」と言うハンニバル。自分以外の人物は、ウィルが栄えある殺人者となることにに悪影響を与えるということなのでしょう。

 

ところで、ここでのウィルの意見、ちょっと引っ掛かります。何が言いたいんのでしょう。ウィルに対するハンニバルの独占欲、周囲への嫉妬を責めているのでしょうか?だとしたらその前提として、ウィルはハンニバルが自分に愛着していることを認めていることになります。
また、直近で殺されたのはビヴァリーなのに、何故彼女の名前が出てこないのでしょう?殺人者を送り合って、彼女の件はチャラということでしょうか?

空想の娘と我が子は気にしても、犠牲にした同僚のことは考えない。ウィルって、やっぱり自己中、自己愛男ですねえ。

 

会話続き~~
お願いだ。あなたのセラピー中に真っ当な考えを保つのは難しすぎる」ウィルも、べデリアの言うハンニバルの悪影響を理解してきたようです。
「君は私のパースペクティヴに適応し、私は君に対抗しているのだ」というハンニバルの言葉で、ウィルも自分たちの関係性の問題が見えたようです。
You're right. We are just alike.
その通り。僕たちは似た者同士だ。
You're as alone as I am. And we're both alone without each other.
あなたは僕と同じように孤独なんだ。お互いがいないと、僕たちは孤独なんだ。

 

このシーンから読み取れることは、ウィルとハンニバルの関係の根本にある問題は憎悪ではないということ。お互いに自分を理解できるのは相手だけだと分かっているから離れられない共依存なのだということです
 

メイスンの殺害計画

似た者同士とはいいながら、行動様式は正反対の2人。
目立ちたがりのハンニバルは、ジャックを招いてFBIの状況を探りながら、魚の姿入りゼリー寄せなんちゅう派手なロシア料理を楽しみ。ウィルは飼い犬たちのために一生懸命肉料理を作る。
そんなウィルの元に、ヴァ―ジャー家の使用人カルロがリムジンで迎えに来ます。
被ってきた音楽は、フォーレの透明感溢れる『レクエム:ピエ・イエズス』。「慈悲深き主よ、彼らに安息を与えたまえ」という短いミサ曲。一体、この曲がどう関わってくるのか、この時点では読めませんでした。

 

一方ハンニバルの心療室には、同じ男が手下を連れて押し入り、メスで1人は倒したもののスタンガンで気絶させられ、ハンニバルは誘拐されてしまいます。

 

目覚めたハンニバルは、冒頭にあったウィルの夢通りにヴァ―ジャー邸の豚の迷路の上に吊るされていました。襲撃の際に倒された仲間が死んだことに怒るカルロは、すぐハンニバルを処刑しようとしますが、止めに入ったのはメイスン。彼はナイフをウィルに渡してハンニバルを殺せと指示します。

夢想通りの状況に立ったウィルとハンニバルは、じっと見つめ合います。夢想と違っていたのは、ハンニバルが嘲るような、挑むような視線を投げかけてきたことだけ
私が殺せるのか?殺せるなら殺して見ろという挑戦ですね。本当にハンニバルは自信家です。

ウィルがナイフをハンニバルの喉元に持っていくので、望み通り殺してしまうのかと思ったら、ウィルはロープを切ってハンニバルを解放し、カルロに殴られて昏倒してしまいます。

そう、殺せるわけがないのです。

第2シーズンを通して、ウィルが殺さなければならない相手として説得されてきた人物はハンニバル。でも、ウィルが必要としているのもハンニバル。憎悪ではなく愛が問題なのだという、べデリアの読みは正しい。ウィルは気づいていないけれどもハンニバルを愛しているのですね。気づかせたいから、ハンニバルはウィルをいつも追い込んでいく。

自分を取るのか?世間を取るのか?選べというわけですね。

 

メイスン・ヴァ―ジャーの顔面破壊

メイスンを反対に誘拐し、ウィルの家に連れてきたハンニバル。メイスンに幻覚剤を与え、ハンニバルの顔がイノシシに見えるほど意識が朦朧とした彼にサイキックドライヴィング(心理操作)。

豚の脂肪計測用ナイフで脅されたのに腹をたてていたらしく、「自分の身で、脂肪計測を実演してみなさい」と命じます。

 

意識回復したウィルが帰ってくると、メイスンは自分の顔を切り刻みウィルの犬たちに与えていました。顔面を犬に食べさせたことに怒るウィㇽに
「君の味覚を拡げたように、犬たちのも広げた」と、とぼけた答えをするハンニバル。

「殺人か?慈悲か?」と聞かれたウィルは答えます。
「慈悲は存在しません。僕たちの爬虫類脳に蔓延った部分で、僕たちは慈悲を考え出したんです」
「では、殺人はなしだ」と返すハンニバル。結局、ウィルはハンニバルに殺人を犯させることすらしないのです。

頬の肉がなくなってしまっても飽き足らないハンニバルは「(腹がすいたら)自分の鼻を食べない」と、メイスンに鼻も切り取らせます。

映画『ハンニバル』でゲイリー・オールドマンが演じてアイコニックになったメイスンの顔面崩壊。そのグロテスクな崩壊状態はTVでは見せられないけれど、破壊の過程が小規模ながらこのドラマ版では可視化されたのです。

ところで、映画でヴァ―ジャーからハンニバルの命を救ったのはクラリス・スターリング。『羊たちの沈黙』の映像化権が獲得できず、クラリスのキャラが使えなくなったTV版『ハンニバル』。結局、ウィルがクラリスと融合してくのだという確認できたエピソード。

ハンニバルは殺す代わりに、メイスンの頸椎を折り半身不随にさせてしまいます。
ここで漸く、『ピエ・イエズス』が関わってきますかと。2人がメイスンを殺さないことで、マーゴが財産を失うことはない。
さらに、ウィルの慈悲の心は、ハンニバルに向けて開かれている。この時点でハンニバルを傷害罪で逮捕もできるのに、そんなことはしないクラリスであるウィルはいつでも、最終的にはハンニバルを救い続けるのだという確信も深まりました

 

事件後、マスクを着用して病床に就くメイスンをジャックが訪ねますが、メイスンも事件の内容をチクったりしません。あくまでも、自分の手で復讐する気ですね。

いつもより一段と華やかなマーゴがメイスンに

これからはアタシがあなたの面倒を看るわ、愛しいメイスン」って強気にほくそ笑むところもいいですね。やっと、マーゴが主権を取り戻して、自由になって、いい感じ!

 

アキレウスとパトロクロス

ニコライ・ゲーの油絵『パト六ロスの死を嘆くアキレウス』を模写するハンニバル。傍らで見つめるウィル。

『イーリアス』で言及されるときは常に、 パトロクロスはその共感力により定義されていたようだ』なんて言ってるハンニバル。
ホメーロスの叙事詩『イーリアス』ですね。アタシも読みましたよ。仲間の死に涙したり、ギリシア軍のメネラーオスとかトロイア軍のアガメムノーンとかへクトーㇽとか、他の武将にはないやさしさと思いやりを感じわせるキャラでしたよ。

彼は戦場でアキレウスに成り代わったんでしょう。アキレウスの鎧を着て、彼のために死んだ」と続けるウィル。
そうそう、総崩れしそうなギリシア軍を鼓舞するため、後で自分の力を誇示するために出渋るアキレウスに成り代わって出陣して自軍を盛り上げたけど、ヘクトールに殺されちゃったのよネ。でも、それは功名心と見る学者もいたわよ。

「その通り。正体を隠したり現わしたりというのが、ギリシア神話を貫くテーマだ」って、また、博学するハンニバル。これは正しいわね。

ハンニバルの言いたいことは分かります。ハンニバルはアキレウスでウィルはパトロクロス。ハンニバルの殺人罪を被って逮捕されたことは、2人の友情の動かぬ印だと、主張してるんですよね。

その解釈は自分勝手すぎるだろう!と、怒る視聴者。
「僕たちのように、戦いで鍛え上げられた友情ですね」と、妙に素直なウィル。

 

すると、突然ハンニバルは言います。

Achilles wished all Greeks would die, so that he and Patroclus could conquer Troy alone.
アキレウスはギリシア軍全員の死を願っていた。パトクロスと2人きりでトロイを征服するために。

エッ、おっさん何言ってるの?パトクロスを殺されて怒り狂ったアキレウスは、1人でトロイ軍を壊滅状態に追い込んだ後ヘクトールを殺して死体を引きずり回したのよね。でも、ギリシア軍全員の死を願ったなんて聞いてないけど。まあ、自分をあがめ称えよ的に、出渋りの時にギリシア軍を呪いはしたけど。

ウィルとハンニバルの栄光のために、周囲の人間は死んでしまえってのは、ハンニバルの気持ちでアキレウスそのものではないと思います。

無理が通れば道理は引っ込むって、古い諺を思いださせる傲慢ハンニバル。

 

なんでこんなエピソードが入ってるのか?『イーリアス』では、アキレウスとパトロクロスの関係はあくまでも苛烈な友情。なんですけど、プラトンの逍遥学派あたりから2人を恋人とする解釈が出てきました。

このシーズンは2014年放送だけど、これに先立つ2011年アメリカの作家メラニー・ミラーが、2人の友情すら越えた濃い~ロマンスを描く『アキレウスの歌』を刊行してるのね。

製作のブライアン・フラーは、パトクロス視点で描かれたこっちの物語を意識して、濃い~ロマンスだって言いたかったんだと。ほの暗がり、暖炉に炎が揺れるめちゃロマンティックなシーンですからね。

「2人を倒すには神の介入が必要だった」って、続けるハンニバル。

「この状況は続かない。僕たちは逮捕されるよ」と、憂鬱そうに答えるウィル。ハンニバルにもジャックにも嘘つきまくってるウィルですから、ロマンス状態は続きません

ウィルの嘘をまだ信じてるハンニバルは、

「ジャックは君がフレディ・ラウンズを殺害したと疑っている」なんて言い。

それを利用してウィルは唆します。

だったら、ジャックが欲しがってるものを渡したら。あなたの正体を見せてやればいい

チェサピークの切り裂き魔かね?ジャックとは友人になったから、彼に真実を伝える責任がある」なんて、意外に信義を重んじる発言をするハンニバル。

 

ウィルは、今度こそハンニバルをハメようとしているのか?だんだん、ウィルがオヤジ2人を手玉に取る悪い女に見えてきました。

そんでもって、この2人の自己中、自己愛男は、本当にお似合いだと思いましたよ!!

 

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