「ジョフリー、サーセイ、ウォルダー・フレイ、メリン・トラント、タイウィン・ラニスター、紅の女、ベリック・ドンダリオン、ソロスのミア、イリン・ペイン、マウンテン、ハウンド」これは、アリア・スタークの殺しのリスト。父親エダード(ネッド)の処刑を目撃して王都を逃げ出したアリア・スターク。孤独と恐怖、トラウマを抱えた小さな少女を支え続けたのは燃えるような復讐心。
そのアリアを剣術に秀でた少女から、超絶暗殺マシーンに変えたジャケン=フ=ガーは、ゲーム・オブ・スローンズ史上でも、最も謎めいた人物。その正体の論議はつきません。
不可解な囚人
ジャケン=フ=ガーは、登場の仕方からして謎です。
処刑を前にしたネッドから、アリアの保護を託された"冥府の守人”の新兵募集係ヨーレンは、彼女を新兵アリーとして王都から救い出します。補充兵は、王都の落ちこぼれや落し子、犯罪者たちからなっていましたが、"壁”へと旅する一団の檻に閉じ込めらた三人の囚人兵の一人として、ジャケン=フ=ガーはアリアの前にたち現れます。
サーセイの命により、長子ジョフリー戴冠の障害となる亡き夫ロバートの落し子全員を誅殺するため、アリアの友ジェンドリーを追ってきたラニスター軍に襲われ、補充兵皆殺しになりかけたところ、アリアに檻の扉を開けてもらい逃げおおせたジャケン=フ=ガー。
ラニスター軍に囚われて、ハレンの巨城で召使となっていたアリアやジェンドリーたちと再会したジャケン=フ=ガーは、三人の囚人の命を救った恩に報いるため、アリアが望む三人を殺す約束をし、ラニスター軍の監視の中、迅速に約束の殺人をこなして、アリア達の脱走を助けます。
この時、ジャケン=フ=ガーがアリアの正体を知っていること、彼が複数の顔を持つ超絶の暗殺者”顔のない男”だと視聴者は気づくのですが・・・
自由に顔を変えることができる、アイデンティティを変えることができる殺人の達人が囚人として"冥府の守人”に捕まっていたなんて腑に落ちないのです。敢えて囚人となっていたと考える方が、理屈にあっています。
何で?勿論、アリアを待っていたと考えるのが妥当としか言いようがありません。
では、誰に頼まれて?
もしくは何のために?
"顔のない男"はアリアに"No One"を望まなかった
ジョフリーとサーセイはアリアの父ネッドの敵。イリン・ペインはネッドの首切り役。
ハウンド(サンダー・クレイゲン)は親友マイカを殺した男。
紅の女は大親友ジェンドリーの誘拐を図り、ベリック・ドンダリオンとソロスのミアは兄弟団と称しながら大親友のジェンドリーを裏切り、誘拐に加担。
メリン・トラントは、剣術の師匠シリオ・フォレルの敵。
ウォルダー・フレイとタイウィン・ラニスターは母と兄が暗殺されたレッド・ウェディングの仕掛け人。
マウンデン(グレゴール・クレイゲン)はハレンの巨城で捕虜の拷問と殺戮を繰り返していた非道の塊。
殺しのリストの人物の復讐を果たすため、アリアはジャケン=フ=ガーを追ってブレーヴォスの”黒と白の館”に趣き、”顔のない男”になるため弟子入りを志願するのですが・・・
「"顔のない男"として"数多の顔を持つ神"に仕えるには"no one(何者でもない者)"にならなければならない」と、ジャケン=フ=ガーは突き放します。
"Who are you?"というジャケン=フ=ガーの問いにアリア・スタークだと答える度に、アリアは罰を受けることになります。
他人になり変わって、殺人を請け負っても、結局はアリア・スタークとしてメリン・トラントを殺してしまう強固なアイデンティティ。
何度も殺されそうになる試練の果てに弟子仲間のウェイフを仕留めたアリアにジャケン=フ=ガーは、「ついに娘は何者でもない者になった」と告げますが、「この娘はウィンターフェルのアリア・スターク。私は家に帰る」とアリアが答えるのを受けて、ジャケン=フ=ガーは会心の笑みを浮かべ、”顔のない男”としての力を与えます。
ということは、ジャケン=フ=ガーは、アリアがスタークとしてのアイデンティを失うことなど望まなかった、アリア・スタークとして、復讐マシーンに育て上げようとしていたのだと、この時、気づくことになります。
そこで、
ここから、ジャケン=フ=ガーがスターク家と関わる誰かであろうという、憶測が生まれるのです。
シリル・フォレル説
王都の城でアリアに”水の踊り子”の剣術を教えた師匠のシリオ。
父ネッドが捕らえられ、追っ手がアリアにも及んだ時、練習用の剣で”王の守人”たちの脚を止め、アリアを救いました。
この時、メリン・トラントの剣に屈したように見えるのですが、殺害シーンが出てこない。
それがシリル生存説に繋がり、ジャケン=フ=ガーとなってアリアを守っていたという見方が出てきますが、
シリオは「五王の戦争」にも「ホワイト・ウォーカーとの戦い」にも関連性のない人物。
なので、シリオ・フォレルがジャケン=フ=ガーだとすると、ではシリオ・フォレルは何者なのか?という疑問が出てくる堂々巡りとなってしまいます。
人気の高いキャラ、シリオですが、この説ではプロットが空中分解してしまいます。
ネッド・スターク説
実はネッドが生きていて、アリアを守り復讐を企んでいるという説です。
が、イリン・ペインの手で処刑され、首が切り落とされて晒しものとなっているのを視聴者は目撃しています。
それでも生き返ったら、もう、「ゲーム・オブ・スローンズ」ではなくて、「スーパー・ナチュラル」の世界観になってしまうかと・・・
レイガー・ターガリエン説
狂った先王エイリス・ターガリエンの王太子にして、そのリアナ・スターク誘拐がロバート・バラシオンの反乱の原因となり、トライデントの戦いでロバートに破れ、殺されたと言われるレイガー。その死体は見つかっておらず、生存説が飛び交っています。
さらに、「ホワイト・ウォーカーとの戦い」も予測していたと思われるレイガー。
「ゲーム・オブ・スローンズ」の因縁の大元を辿っていくと、総て、彼のところにたどり着くのです。
その彼が、ジャケン=フ=ガーとなってリアナによく似ていると言われるアリアを守り導いているという考えは、有りうるかと判断します。
ターガリエン一族は兄妹結婚で悪名高いのですが、原作者ジョージ・R・R・マーティンによるエンド・ゲームの最初の構想は、ジョン・スノウとアリアが結ばることだったといいます。
シーズン2のタイウィンとの会話で、アリア自身もドラゴンとターガリエン一族の女戦士たちへの強い憧れを明かしていますし
レイガーの目論見の一貫に、アリアを守って最強の戦士とするということがあっても不思議ではありません。
第8シーズンでジャケン=フ=ガーに話題が戻るのか、
捨てプロットとして置き去りにされるのかは微妙ですが
レイガーの目論見は、常に物語の動因となっているので、必ずでてくるものです。
では、なんでレイガーがリアナ・スタークを選ぶ必要があったのか?
これは、次回の「ジョン・スノウは"光をもたらすもの"なのか?」で、ジックリ掘り下げますかと・・・