誘拐され自分で自分を食べるよう強制されたエイブル・ギデオン、誘拐にまつわる殺人で無罪放免となるウィル、生きて見つかったミリアム・ラス、ハンニバルの巨大なデザインの中で、彼らはどうなっていくのか?読んでみました。
※「普通こんな会話しないよね」なセリフやアートすぎなイメージや音楽も、回が進むほどに重要な意味を持ってくるので、詳しく掘ってます。
ミリアム・ラスという囮
2年前チェサピークの切り裂き魔捜査中に行方不明となり、切断された片腕がみつかり、生死を危ぶまれていたミリアム・ラスの発見に続いて行われる身体検査と発見現場の捜査。髪まで泥にまみれて、肘から下を切断された左の二の腕が先細って痛々しい。生きている人間の腕を切り取るなんて、残酷すぎるとハンニバルを呪った瞬間でした。
「 ...あたし、間違ってたわ。お願い…ジャック…こんな風に死にたくない」
かつて捜査途中でみつけたミリアムの録音に聞き入るジャックは涙ぐんでいます。2年前にミリアムが失踪した時に、切り裂き魔に殺されたとあきらめずに捜索を続けていれば、こんな悲惨な目に合わせずに済んだろうにという、深い後悔が浮かぶその顔。
ハンニバルはウィルへの愛以外は人でなしだし、ウィルはハンニバルへの愛憎でどんどん狂ってるし。トチ狂った2人の間に挟まったジャックは、正義感で盲目になるけれど、とても人間らしいなと思いました。
FBIに立派な仮住まいも用意してもらったらしいミリアム。捜査中に切り裂き魔の正体を見破って拉致歓喜されたのだから、切り裂き魔逮捕に協力してほしいとこうジャックにミリアムは答えます。
I don't remember finding him. He got inside my head.
あの人の正体を見破ったかなんて覚えていないの。あの人に頭を占領されたから。
I remember a dream about drowning. Then being awake. And not awake.
溺れる夢を見たのを覚えているわ。目覚めても目が覚めないの
Being myself, and not myself. I remember I could smell salt air.
自分であって、自分でないような。塩の香りを覚えているわ。
We were by the sea. For weeks. Months. Longer.
私たち海辺で暮らしていたの。何週間も、何か月も、もっと長く...
Days and evenings blurred, I'd wake up to the smell of fresh flowers and the sting of a needle.
昼夜もぼんやりして、花の香りと針の痛みで目覚めるの。
I wasn't afraid. Fear and pain were so far away, on the horizon, but not close. Never close.
怖くはなかった。恐怖と痛みは遠い地平にはあったけれど、決して身近ではなかった。
多分、ミリアムは海辺の別荘のようなところに幽閉されていたのですね。向精神薬や催眠剤を常に投与されて意識が朦朧としていた。多分、ウィルと同様、ストロボライトを使ったサイキックドライヴィング(洗脳)で記憶や精神を操られていたのでしょう。
ハンニバル=切り裂き魔はミリアム誘拐後2年間は連続殺人を行わなかった。ボルティモアの市中で精神科医として開業しながら、海辺の別荘でミリアムの面倒を看ていたわけですから、自由な時間は少なかったのでしょう。
He treated me very well until the end. Until he put me in the ground.
最後がくるまでよくしてくれたわ。地下に閉じ込めるまでは。
ここもよく分かります。ミリアムは喰っちまうべき失敬な豚ではなく、自分の正体を見破るすぐれた知性を持つ研修生。駒として使うギリギリまで、大切に扱っていたのでしょう。
Even when he took my arm. He told me what he was going to do.
私の腕を奪う時も、何をしようとしてるのか説明してくれた。
I went to sleep. I woke up, it was gone.
眠って、目覚めたら腕がなくなってたの。
Said he was giving it to you... He said he wanted to give you hope.
私の腕をあなたにあげるって、あの人言ってたわ。あなたに希望を与えたいんだって。
この言葉からハンニバルの残酷さがヒシヒシと伝わります。外科医が患部を切り取る時のように冷静に状況を説明する。しかも、ジャックに希望を与えるというために、腕を切り取ってしまうとは、人の尊厳を根本では無視しているのが分かります。
ハンニバルの言う希望は、ジャックにとっては心痛でしかなかった。それを、あえて希望と表現するのも残酷極まりない。
ハンニバルにとって、他の人間の精神も身体も自在に弄ぶ対象なのですね。まるで、神のように残酷なふるまい。ハンニバルの神様コンプレックス、恐るべしです。
シーン変わって、容疑者のようにFBIのブラックミラー付きの部屋に呼び出されたハンニバル。尋問者のような立場で同席させられているアラナは、ハンニバルへの疑いに怒りを隠せません
鏡の裏には面通しのためにきたミリアムとジャックが控えています。 それを察して、挑戦するかのように鏡に近ずくハンニバル。ミリアムの脳内ではストロボライトがフラッシュして男のシルエットが浮かび、
「彼(ハンニバル)は切り裂き魔じゃないわ」と、彼女は否定します。
完璧に操作されているミリアムの精神。ハンニバルが彼女を返還した真意はどこにあるのか?彼女は何のための囮なのか?気になるところです。
釈放されたウィルの確信
切り先魔であるハンニバルがギデオン誘拐現場に残した膨大な証拠品のおかげで、告訴が取り下げられボルティモア犯罪者精神病院から出所するウィル。頼りなげな表情で独房を見回しています。
結局、彼を救おうとしてくれたのは、ウィルが真犯人だと決めつけたハンニバルだけ。実際救ってくれたのもハンニバル。複雑な気分でしょう。
とはいえ、「切り裂き魔に釈放してもらったな」とあからさまに嫌味を言うチルトンに対しては、いつもどおりの不機嫌な表情に戻って、
「ギデオンはお遊びがたたって、もう殺されているはず...次はあんたの番だ...たすかりたかったら、ハンニバルと組んでやってきたアクドい洗脳療法のことを洗いざらいジャックに告白しろ」と、脅しをかけます。
「なんでお前だけ殺されないんんだ」といぶかるチルトン。
「それは、あの人が僕と友達になりたいからさ」と自信満々で答えます。
つまり、ハンニバルに愛されているから自分は助かった。安泰だということをウィルは十分自覚しているのですね。第1シーズンでハンニバルにディナーに誘われても、気後れして逃げ出したウィルは、もうどこにもいないのです。
車が必要だろうと迎えに来て、
「君のこともミリアムのことも、捜査の努力を諦めてしまった。」と申し訳なさそうにするジャックに
「捜査じゃなくて、僕の話を聞けばよかっただけ」と、ウィルはそっけない。
「ミリアムがハンニバルじゃないと断言した」と言っても、「十分な断言ですか?」と、ウィルは諦めません。
ミリアムがみつかった廃屋にはストロボライトもあり、切り裂き魔の隠れ家に見えるのですが、ミリアムの証言にあった海辺の住まいとは一致しません。
現場検証に同行したウィルは、殺害されたビヴァリーの血液や、死体を飾り付けたのと同様のアクリル板を見ても、顔色一つ変えません。マシューを刺客として送ったことで、彼女の件に関しては気持ちが済んでるということでしょうか?
ウィルが興味を惹かれたのは、アイズリーの死体に飾りつけられた残りの、しおれた花々。
創造力の振り子がヒュンヒュンと動いて花々は蘇り、ハンニバルの心療室でウィルは桜に括られたアイズリーを前にして、心臓の部分に蒼く毒々しい花を差し込みます。
I sewed the seeds and watched them grow.
私は種を蒔き、それらが育つのを見守った。
I cultivated a long chain of events leading to this.
私はここに至る事件の連鎖を練り上げた。
This, all of this, has been my design.
この総てが, 私が制作中のデザインだ。
これが今回のウィルの見立て。ということは、ウィルが見ているのはハンニバルが長い時間をかけた作品。アイズリーの死体が意味するものはアイズリー自身ではない。これは"悪の華"であるウィルへのオマージュ。ウィルが内包する悪を開花させるために練りあげられたデザインであるということを、ウィルが確認したということでしょう。
さらに、ミリアムを廃屋に連れてきたのは、彼女を殺すためではなく、ジャックに見つけさせるため。新たに切り裂い魔としてハメる相手にジャックを導くため、ハンニバルから疑いを逸らすためだと看破します。
アラナに心を閉ざすウィル
ウルフトラップにある自宅に戻ったウィルを迎えたのは、愛犬たちとその面倒をみてくれていたアラナ。ウィルは第2シーズンで初めて、満面の笑顔をみせるのですが...
アラナは突然「あなたを誤解してたわ」と、言い出します。
Because you didn't believe me? Or in me?
僕の言うことを信じなかったから?それとも僕を信じなかったから?
Because you let me question my own sanity, my sense of reality?
僕の正気を、僕の現実認識を疑うように仕向けたから?
アラナが味方だと信じているウィルは、アラナが自分の行動を後悔していると考えました。
ところが、アラナは「ウィルがハンニバルを殺そうとしたから」と、怒ったように答えます。状況を説明しようとしても受け付けないアラナの態度で、ウィルは悲しげになっていきます。第1シーズンでは、好意を持ち合ってキスまでしたアラナに、理解されない悲しみでしょう。
Are you going to try to hurt Hannibal again? Is he safe?
またあの人を傷つける気なの?あの人無事でいられるの?
アラナがここまで言い募った時、さすがのウィルもアラナとハンニバルが付き合っているのだと気づきます。
From me, or for you?
僕から無事ってこと?君のために無事ってこと?
と言い返すウィルの表情は、もうアラナに対しても閉ざされてしまいました。
「彼は危険だ。できる限り距離をとるべきだ」と忠告が、まるで捨て台詞のように響くウィルでした。
何かあると相手に対する好悪が手のひらを返したように変わっってしまうというのが、第2シーズン以降のウィルにはよくある傾向です。自尊心は高いけど自信はない。そんなウィルの傷つきやすさが、よく分かるシーンだなと思いました。
殺したくても殺せない相手
機械仕掛けで動く高価な義手を装着したミリアムをウィルは訪ねます。
Guru(導師)と呼んで、手放しでジャックを尊敬し幽閉中の出来事を忘れてしまっているミリアムに、ウィルはいつも通りハンニバルの仕打ちを語ります。
I remember now. Not all of it. Pieces. I was under his influence.
今では僕も思い出した。全部じゃなく断片だけど。僕は心理操作されてたんだ。
The Chesapeake Ripper used some kind of light to induce seizure responses in my brain.
切り裂き魔はある種の光で、何度も僕に脳内発作を引き起こした。
He created blackouts and lost time.
失神や記憶喪失を起こさせたんだ。
ミリアムも記憶の断片を思い出しました。
I remember the light. He always stood in front of it, at a distance from me, silhouetted, very still.
私も光を覚えているわ。あの人はいつも、その前に立っていた。私とは距離を置いて、シルエットになって、じっとしてた。
He would listen to chamber music. I still hear it.
あの人はいつも室内音楽を聴いてた。今でも聴こえるわ。
And his voice, low and even, would pull me to him.Like a current.
低くて落ち着いた声で、あの人は私を引き寄せるの。流れる水みたいに。
ハンニバルがミリアムに行っていた洗脳操作は、こんな風だったのですね。
さらに、ミリアムの耳にはハンニバルの声が聞こえます。ハンニバルを演じるマッツ・ミケルセンの声って、低くてハスキーでヒプノティック。だから、魔術的効果が実感できてしまいます。ハンニバルの言葉は~~
You're waking now. Waking, calm. Waking in a pleasant room. Safe...
君は目覚めている。穏やかな気持ちで。君は素敵な部屋にいて、安全だ…
ウィルにはその洗脳操作の目的までは分からない。デザインは進行中なのですから。でも、自分たちが今でも操られていることは感じています。
You and I are... part of his design.
君も僕も…彼のデザインの一部なんだ。
He wanted you to be free. He wanted me to be free too.
彼は君を解放しようとしていた。僕のことも解放しようとしていた。
Neither of us are really free. He's not done.
本当は、僕らは自由なんかじゃない。彼の計画は終わってないんだから。
あまりにも複雑で巨大なハンニバルのデザインからは逃れることはできない。ハンニバルが生きている限り逃れることはできない。
だから、ウィルはハンニバル邸に赴き、キッチンで彼を待ち銃口を向けます。ちょうど第1シーズン最終話でジャックに逮捕される前にしていたように。その時の会話の続きをしたいと。ただ、今回のウィルは憎悪に満ち満ちて銃口を向けています。
You wanted me to embrace my nature, Doctor.
あなたは僕が自分の本性を受け入れることを願ってたんでしょう。
I'm just following the urges I kept down for so long, cultivating them as the inspirations they are.
僕は長い間抑圧してた衝動をインスピレーションとして培って、それに従ってるだけ。
ギャレット・ジェイコブ・ホッブスを殺した時のように、ハンニバルを殺しても正義しか感じないというウィルに、「なんで君なのか?なんでミリアムなのか?興味はないかね」「私が切り裂き魔でなかったら、君は無実の男を殺すことになる」と、冷静な説得を続けます。
ハンニバルの言葉を聞きながら、どんどん混乱していくウィル。他の人々には傲慢で侮蔑的な態度で接することができるまで成長したものの、ハンニバル相手だと腰砕け状態になってしまうのですね。
そんなウィルにハンニバルが撃ち殺せるのか?
ウィルが撃鉄を起こした時に顔を反射的に背けた以外は、普段通りのハンニバル。ある種のサイコパスと同じで、死に対する恐怖心がないのですね。
Hannibal:You better than anyone know what it means to be wrongly accused.
ハンニバル:無実の罪を問われることがどんなものか、君はよくわかっているだろう。You were innocent and no one saw it.
君は無実なのに、誰にも信じてもらえなかった。
Will:No, I'm not innocent. You saw to that.
ウィル:違う。もう無実(無垢)じゃないんだ。
ハンニバルのデザインにのせられて、マシュー・ブラウンの手で殺人未遂を犯してしまった。今も人殺しをしようとしている。アラナが非難する通りの殺人者に仕立て上げられてしまった悲しみと恨みがこもったウィルの最後のセリフ。ハンニバルは言葉で急所を突くのが得意ですね。
「私が切り裂き魔だとして、殺したら何の答えもえられなくなるだろ」とじっとウィルの瞳を見つめるハンニバル。銃口を向けながら、長い間見つめ返すウィルの表情がなんとも表現できないものに変わっていき、ため息をついてその場所から逃げ出してしまいます。
あまりにもよくウィルを理解しているハンニバル。ただ一人、本気でウィルを守ろうとするハンニバル。ウィルは彼を殺したくても殺せない。憎みたくても憎めないのですね。
ハメられたチルトン
ウィルの脅しが効いてハンニバルの次の標的になるのではないかという恐怖に駆られたチルトンは、ジャックを訪ねます。とはいえ、病院長としての保身と誇りが邪魔になって忠告通りに罪を告白できず、ウィルを治療した優秀な精神科医として捜査協力するから護衛をつけてくれと申し出ます。
当然、ジャックは相手にしません。
一方ラボでは、ミリアム発見現場の花にハンニバルの指紋が発見んされ、ミリアムの血中からチルトンが洗脳に愛用する薬剤アモバルビタールとスコポラミンが検出されます。ハンニバルとチルトンの出頭を命じるジャック。
正直に告白しなかったことが仇になってしまったチルトン。
すごすご家に帰ってくると、オールホワイトな内装のモダンでスタイリッシュな家には、なぜかビープ音が響いている。音を追っていくと地下のセラーに四肢を切断されたギデオンの死体が~~
驚いて逃げ出すと透明なマーダースーツを着たハンニバルが扉口で待ち構えていて、クロロホルムを嗅がされ、目覚めるとFBIの局員が切り裂き魔の手口で殺されているのを発見。ハンニバルに切り裂き魔としてハメられたことを悟ったチルトンは、何故かウィルのところに匿ってくれと逃げていきます。
この時乗ってるチルトンの愛車は、ヴィンテージのジャガー・コンヴァーティブル。派手な車ですねえ。こんなんで逃走したら目立ってしようがない。チルトンの見栄っ張りな性格がよく表れています。
チルトンに好意などないウィルは早速ジャックを呼び、チルトンが銃を向けても「あんたは人殺しじゃない」と嘲笑するだけ。
とりあえずウィルはジャックには、「見たままを信じたらだめだ。あんたは(切り裂き魔に)遊ばれてるよ」なんてアドバイスはします。チルトンをハメることで先手をとってるわけなので、ジャックがハンニバルに遊ばれてることは確か。
この後、ウィルに見捨てられたチルトンははジャックを雪の森で追いかけっこ。おたおたと雪に足をとられながら逃げるチルトンと、巨体なのに雪の上を滑走していくアスレティックなジャック。チルトンがお縄頂戴になるシーンの2人のコントラストが絶妙でした。
どこまでも情けないチルトンが切り裂き魔になれるわけはないのですが、どう始末をつけるのハンニバルと思っていると...
ミリアムという凶器
ハンニバルとチルトンの出頭命令が下される以前に、ハンニバルを疑い始めているジャックは、ミリアムをハンニバルの心療室に連れていきました。
2年前にここに来たことも、ハンニバルの素描にあった「負傷した男の図」を見てハンニバルと切り裂き魔の関係性に気づいたことも忘れているミリアム。
The most-important aspect of a successful recovery is recognizing that life will never be the same.
(トラウマからの)回復が成功するための最大の要因は、2度と同じ生活には戻れないと自覚することだ。
と、相変わらずむごい真実をなにげなく語る残酷なハンニバル。
ジャックが録音した、救けを求める自分のメッセージを聞いたミリアムは、記憶から消えている過去を思い出したいと、ハンニバルの心理療法を受けることにしますが~~
ストロボがフラッシュする中、ハンニバルは何故か
「君は目覚めている。穏やかな気持ちで。君は素敵な部屋にいて、安全だ…」という言葉を繰り返します。
眼を開けたミリアムは、録音通りの言葉を語り始める。ヤバイ!と、視聴者のアタシは思いました。ミリアムは完全に洗脳されている。この言葉に反応するように仕向けられている。多分、洗脳はこれだけではない。これらの言葉にミリアムは反応し、何らかの行動するようにセットされているはずだ!と。
一方、FBIに逮捕されて身体検査をされ、証拠品として衣服を取り上げられてオレンジ色の囚人服のようなものを着せられたチルトン(これは、ウィルが逮捕された時の、完璧なデジャヴですね)。
罪人として扱われて尊厳を奪われたとオカンムリのチルトンは、訊問室でアラナに逆ギレ。それをブラックミラー越しに見ていたミリアムの脳内ではチルトンが
「君は目覚めている。穏やかな気持ちで。君は素敵な部屋にいて、安全だ…」
と語り出し、ミリアムが見る幻覚のシルエットはチルトンの顔を持つようになります。
「こいつだわ。こいつが犯人よ」と叫んで、ミリアムはジャックの銃を奪ってチルトンを撃ちます。チルトンの左頬から脳を銃弾が貫通していく。
なるほど。洗脳の最後のキーはチルトン自身だったのですね。ミリアムがチルトンの顔を認識すると、上の言葉を語った人物、すなわち切り裂き魔はチルトンであるという洗脳が発動するように仕掛けられていたのですかと。
切り裂き魔に捕えられていた被害者がチルトンを切り裂き魔と断定すれば、チルトン逮捕は確定。不安定なミリアムが怒り狂って銃撃する。これも計算に組み込まれていたのでしょうか?重体のチルトンからの反証も難しくなり、自分の安泰は確定という、見事な見事なハンニバルのデザインのお手並み。
感心しました。
逃れられない相手から逃れるには...
ウィルのセラピー予約が入っていた時間帯。ジャックとチルトンを出し抜いてくつろぎ、音楽を聴きながら一人心療室でワインをたしなむハンニバル。
ドアをノックする音があり、開けるとウィルの姿がありました。
で、このウィルの姿に、アラ、ビックリ!めっちゃ、おめかししてるじゃないですか!
髪をカット&セットして、無精ひげも整えて、愛用のサーモン色シャツにはアイロンがかかってるし、パンツもボテボテのチノパンからすっきりしてヒップラインが際立つドレスパンツになってるし。
おまけに、わざわざ後ろ姿で立ってるのね。それもハンニバルが素描にするようなお気に入りのポーズで(↓)。
どうでもいい感じで来ていたツィードのジャケットは、キチンと畳んで腕にかけてるし~~。こ~~んなにオシャレしてるウィルを見るのは初めてですよ。
お前、デートのつもりなの?って、思わず画面に向かって言いそうになっちまいました。
「May I come in? お邪魔してもよろしいですか?」
なんて、第1シーズンの不作法っぷりからは考えられないくらい、礼儀正しい言葉遣いになってるし…
「私に銃口をむけに来たのかい?」
「いいえ、今晩は違います。どなたかお待ちだったのでは?」
「いや、君を待ってたよ」
なんて会話があり。そういえば、ハンニバルはウィルが収監中もウィルの予約時間は空けたままで心療室で物憂く過ごしてましたねえ。何の連絡もなくその時間に来るなんて、ウィルもそのことは十分承知だったわけです。だから会いに来た。救いようがないオヤジたちです。
WILL:I have to deal with you. And my feelings about you. I think it's best if I do that directly.
ウィル:あなたと向き合わないと。あなたに対する感情と向き合わないと。だから、直接向き合うのがベストだと考えたんです。
これってさ、ラブコメみたいなセリフじゃないですか!浮気男に裏切られたカノジョが気持ちの整理をつける的な進行でよりを戻しちゃうアレでしょ。
HANNIBAL:First you have to grieve for what is lost and what has changed.
ハンニバル:まずは、失ったもの、変わってしまったことを嘆く必要があるね。
WILL:I've changed. You changed me.
ウィル:僕は変わってしまった。あなたが変えてしまった。
HANNIBAL:The friendship that we had is over. The Chesapeake Ripper is over.
ハンニバル:我々の友情は終わった。切り裂き魔事件も終わった。
WILL:It had to be Miriam, didn't it? She was compelled to take his life so she could take her own back.
ウィル:ミリアムじゃなければならなかったんでしょ。彼女は自分の人生を取り戻すために、チルトンの命を奪う必要があった。
HANNIBAL:How will you take your life back?
ハンニバル:君は人生を取り戻すために何をするんだね。
WILL:I'd like to resume my therapy.
ウィル:セラピーをまた受けたいんです。
そう言って、2人はセラピー用の肘掛け椅子に座って向かい合います。2人が座る椅子は、初めてセラピーを始めた時のように遠く離れてしまったけれども、2人の対話は再開しました。
ウィルの言葉には、精神病院に収監されていた時と同様、ハンニバルが切り裂き魔だという言質をとろうとしてることが伺われ、再捜査を始めたとも思えます。ハンニバルはこれまでどおり、のらりくらりとはぐらかす。
これまでの裏切りと復讐の経緯をみると、この2人は離れていた方がお互いにいい。逃れたい相手だから、一緒に過ごして理解して克服する!なんてあり得ないですよ。理解したら、より惹きつけられてしまうでしょう。
ハンニバルも離れているのが身のためだと理性では考えているけれども、ウィルの予約時間を空けていたように、また一緒に時間を過ごすことに期待している。
ウィルも、憎い、殺したいと言いながら、おめかしして戻ってきてしう。
多分、また同じことを繰り返すんでしょう。本当に懲りない人たち。
これだから、『ハンニバル』TVシリーズはメロドラマって言われちゃうんですよ。もう、ベタベタにメロドラマ...
だから、面白いの!