エピソード3では"夜の王"も倒せず、エピソード5ではデナーリス・ターガリエンの大虐殺を黙認しってしまったジョン・スノウ。"光の王"の女祭司メリサンドルに"約された王子"と認められ、死から蘇っても、これまで機能不全に陥っているジョン・スノウ。
それでは、彼の役割は・・・?
※この記事は3月29日の記事を加筆修正したものです。
ジョン・スノウの役割をを、実の父レイガー・ターガリエンを振り返ることからはじめて、掘ってみますかと・・・
真のヒーロー、レイガー・ターガリエン
歴史は常に勝者によって書かれるので、敗者が責めを負うものとなっています。
レイガー・ターガリエンも例外ではなく、先の王太子でありながら簒奪王ロバート・バラシオンから、リアナ・スタークを誘拐して強姦、死に追いやった大悪人とされていました。
ですが、彼をよく知る人たちからは、武勇の誉れ高い戦士でありながら、賢明で寛容、学識深く、詩歌に秀でて民衆から敬愛される理想の王子像が語られます。美貌といういう点では弟のヴィザリスに近く(性格に似たところはありませんが)、父親である狂王エアリスとは、対極の存在。父の治世を憂えていたといいます。
原作によると、少年時代は本の虫状態の秀才君だったのですが、ある日、とある本を読んで一念発起、真剣に武の道に励み始めたのでした。
突然の様変わり。明らかに、ホワイト・ウォーカーの侵略とこれを倒す"約された王子"の預言を知って、レイガーは戦士となったのでした。最初は自分が"約された王子"と考えていたようですがが、次第に自分の子供がこれにあたると確信するようになったのです。
エイゴン・ターガリエンは2人いた!
"赤い毒蛇"と言われるドーンの王子、オベリン・マーテルの妹エリアを妻に娶ったレイガー。原作ですと、二人は娘レイニスと息子エイゴンを授かります。
そうです。エイゴン・ターガリエンはジョン・スノウの他に、もう一人いたのです。
原作では、デナリスの幻視の中でレイガーはエリアの息子エイゴンを抱き上げて、「この子が"約された王子"だ」と叫んで抱き上げました。
何故、国の命運を託す息子はエイゴンでなければならないのか?
ターガリエンの家系図を辿れば明らかです。エイゴン1世こそは、300年前に七王国を一つに束ねた制服王なのです。ターガリエンは近親結婚の家系。共にドラゴンの乗り手である戦士、姉のヴィセニアと妹のレイニスの二人をレイガーは妻として、征服の快挙はなされました。
娘の名前がレイニスなのも頷けます。
エイゴンとその姉妹がホワイト・ウォーカーを倒して、七王国を黄金時代へ導くとレイガーは考えたのでした。
さらに、TVシリーズ第7シーズンでサムウェル・ターリーが明らかにしたように、レイガーはエリアとの婚姻を無効にして、リアナと結ばれたのでした。
それは何故か?
何故、リアナ・スタークなのか?
レイガーとリアナが出会った、ハレンの巨城の馬上槍試合まで戻って考えてみます。
試合の勝者に与えられた、花を送ることで"愛と美の女神”を決める権利。名騎士バリスタン・セルミーを倒して優勝したレイガーは妻のエリアの前を通り過ぎ、リアナにこの名誉を贈り、周囲の顰蹙を買ったのでした。
原作によると、この槍試合で起ったことはこれだけではないのです。
槍試合の2日目、大きさの合わない甲冑を着た小柄な"謎の騎士"が試合に参戦、スターク家の保護を受けていたホウランド・リード(ミーラとジョージェンの父親)に嫌がらせをした3人の騎士に挑み、簡単にやり込めてしまいます。余所者に好きにされて憤り、謎の騎士を捕まえるといきまくリアナの許婚ロバート。単純な男です。
ところが、この騎士の正体はリアナでした。ホウランドの名誉を守るために参戦した、やさしく強い女性。粗暴で女たらしのロバートにはもったいなさすぎです。
ここで、"約された王子"の預言に戻って考えてみます。
デナリスの幻視の中でレイガーは、我が子をさして「この子が"約された王子"、そして"氷と炎の歌”だ」と言います。
ターガリエン家は炎を象徴しますが、マーテルは七王国最南のドーンを司る王家、エリアは氷ではありません。
七王国で氷を象徴する一族といえばスターク家。"約された王子"はターガリエンとスターク双方の血筋を受け継がなくてはならないという結論になります。
そして、リアナは優れた戦士。病弱なエリアとは異なりレイガーとリアナの子であれば最強の戦士、真の"約されたもの"となるでしょう。
"約された王子"の伝説は、本来ヴァリリア語によるものですが、第6シーズンのミサンディの知見ではこのヴァリリア語には男女の区別がないので、王子でも王女でもありうるとのことでした。
ジョン・スノウこそが"約された王子"?
ハレンの巨城の槍試合から1年後に、リアナは行方不明となりレイガーと密かに結婚して身ごもります。
リアナは口と意志の堅いスタークであり、名誉ある騎士。
北から迫り来る真の驚異から王国と民衆を守らねばならない。レイガーは憂国の思いと"約されたもの"への期待を彼女に語り聞かせて、意気投合したのでしょう。
だからこそ、産褥の床で生まれたのが男子と知ったとき、乳飲み子の名がエイゴンであると、兄エダード(ネッド)に伝えることができたのだと考えます。
ジョンこそが、救世の運命を託されたエイゴン・ターガリエンであり、"約された王子"そして"氷と炎の歌”と考えられるでしょう。
デナリスが"約された王女”という説では、氷が欠けてしまいまし、狂女王となってしまった以上、七王国に繁栄を齎しはしません。
臨終間際のリアナからジョンを託されたネッドは、ジョンの運命の強大な重みを知っていたのでしょうか?
いずれにしても、命懸けで守ったジョンを守ったネッドの心意気に打たれます。
"光をもたらすもの"は必要なかった
第2シーズンで、メリサンドルが "約された王子"の剣だと言って燃やしていたのが
"光をもたらすもの(ライトブリンガー)"。
ライトブリンガーとは何なのか?
もう一度、"約された王子"の預言に戻ります。
原作によると、"約された王子"は伝説の戦士アゾール・アハイの生まれ変わりです。
そして、闇と戦うために彼が持つ剣の名がライトブリンガー。
アゾール・アハイは30夜をかけて剣を鋳造しますが、冷却水に入れると剣は砕けてしまいます。次に50夜をかけて鋳造し冷却のためライオンの心臓に突き刺しますが、やはり砕けてしまいます。3度目には心も重く、100の昼夜をかけて鋳造し、愛妻ニッサニッサの心臓に突き刺すことで剣は仕上がりました。
闇に打ち勝つ力を持つとはいえ、なんとも呪わしい血塗られた剣です。
ところが、TVシリーズはライトブリンガーを必要としませんでした。
ブラン・スターク暗殺未遂に使った上で、 リトルフィンガーがブランに手渡し
ブランがアリアに手渡したドラゴングラスの柄を持つヴァリリア鋼の探検で
あっけなく"夜の王"は倒れてしまいました。
シオン・グレイジョイが命懸けでブランを守り
アリアが"夜の王"と戦っている間、ジョンスノウは亡者に囲まれて動きが取れなくなっていました。
Valar Dohaeris
ジョン・スノウは"大いなる戦い"以来、機能不全に陥っています。
玉座の真の後継者であるエイゴン・ターガリエンとしての出生の秘密を持て余しながら
その事実を伏せて欲しいと懇願する女王デナーリスを無視して
サンサ・スタークに伝えてデナーリスを追い詰めるキッカケを作ってしまい
だからといって恋人デナーリスを諦められるわけでもなく
ヴァリスが火刑に処されるのを黙認し
狂女王が王都と民を焼き尽くすのを、おろおろと見ているばかりの役立たず状態
でも、この"大いなる戦い"と"狂女王の侵略"に当たり
務めるべき役割がなかったら、"光の王"はジョンを死から蘇らせはしなかった。
役割があるからこそ、彼はここに生きているのです。
これまでのジョンの生き方を顧みると、彼は"統合"を象徴しています。
野人を救うために彼らを自軍に迎え入れ
"夜の王"と戦うために、反目する名家を一つの軍にし
王都侵攻だけを考えていたデナーリス・ターガリエンも引き入れた。
統合と平和が、七王国黄金時代への必須の条件であるとしたら
ジョン・スノウこそ行動を起こすべき"約された王子"。
ですが、そのために彼は
軍国独裁主義に傾こうとする
デナーリス・ターガリエンを誅殺せねばならないのか?
メリサンドルがスタニスに語った預言がジョン・スノウにより成就するのでしょうか?
Thousands will die at your command. 何千もがあなたの指揮下で死ぬことになる
You will betray the men serving you. なたに仕える者らを裏切ることになる
You will betray your family. あなたの家族を裏切ることになる
You will betray everhthing you once held dear.. 大事に思った総てのものを
And it will all be worth it. その価値はあるの
Because you are the son of fire 何故ならあなたは炎の子だから.
You are the warrior of Light. あなたは光の戦士だから
You sweep aside the pretender... あなたは偽者を駆逐する
You will be king. あなたが王になるの
ジョン・スノウは玉座に就くのか?
でも。ジョン・スノウは氷の子でもあります。
彼の行動規範はターガリエンの狂熱ではなく
エダード(ネッド)・スタークに叩き込まれた名誉と正義。
もし、大義のためであってもデナーリスを殺すことになったとしたら・・・
ジョンは"女王殺し"と"肉親殺し"という
七王国の戒律の中では最も不名誉な罪を犯したことになります。
周囲が正義と認めても
ジョンは自分を許せないでしょう。
ジョンはジョンを罰して追放することになるのか?
そして誰が王位に就くのか?
最終回の展開が待ちきれません。
Game of Thrones | Season 8 Episode 6 | Preview (HBO)