海外エンタメ 千一夜物語

もの好きビルコンティが大好きなゲームオブスローンズを中心にゴシップ話も交えて、海外ドラマ・エンタメを一人語り・・・

マッツ・ミケルセンが史上最強のハンニバルになる瞬間 1.06アントレ 深読みネタバレ

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ジリアン・アンダーソン が脳天気な酔っ払い、マッツ・ミケルセンがボイズンダフッドのガキ大将、ヒュー・ダンシーが面倒見のいい隣のおばさんみたいだったという以外には、新しい収穫がなかったハンニバルリユニオンで気落ちしてしまったビルコンティ。

気持ちを立て直して、話の核が周囲の登場人物の心の機微からハンニバル自身ににシフトする、アントレ(メインディッシュ)を掘ってみますかと…

 

 

"負傷した男の図"殺人とエイブル・ギデオン医師

ボルティモア精神障害犯罪者病院から、FBIが長年追っているチェサピークの切り裂き魔の代表的作品"負傷した男の図"殺人と酷似した事件が起き、院内に収監されている元外科医エイブル・ギデオンが「自分がチェサピークの切り裂き魔だ」と名乗りをあげているという一報が行動分析課に入ります。

 

"負傷した男の図"というのは、14世紀あたりの医学書に出てくる様々な負傷や病巣を治療するために描かれた人体の総合図。いかにも元外科医らしい殺人手法です。

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2年前にジェレミー・オルムステッドをこの手口で殺害してから、チェサピークの切り裂き魔の犯行は途絶えている模様。

 

上司のジャック・クロフォードとともに病院に駆けつけたウィル・グラハムは、現場を脳裏で再現。この衝動的な殺人は練り上げられ芸術的で、精巧な外科処置で身体の一部が切り取られているチェサピークの切り裂き魔の手法とは明らかに異なっていると見抜きますが、ギデオンは自分が切り裂き魔だと言い張ります。

 

妻子を突然殺害して2年間収監されているギデオンでしたが、アラナ・ブルームはウィルの説をさらに推し進め、ギデオンが心理操作されてチェサピークの切り裂き魔と思いこまされているのではと疑います。

 

ギデオンを演じるのは、女装トランスジェンダーのコメディアンで社会活動家のエディ・イザード。

心理操作に気づいた後は驚くほど明晰になって、ほかの人物が気づかないウィルとハンニバルの微妙な関係性にいち早く目を向けて、ある種の狂言回しのようになっていきます。

 

ウィル・グラハムの危うい心理状態

 病院の入り口で、不安そうなウィル。

I’m always a little nervous going into one of these places.

精神病院に来るとちょっと神経過敏になってしまう。

Afraid they’ll never let me out again.

2度と出てこれないような気がするんだ。

 

精神状態がさらにヤバクなっているのでしょうか?

看護師殺しの想像再現の後でも、落ち着かない様子。 ボルティモア精神障害犯罪者病院長のフレデリック・チルトンとも、当然視線を合わせられません。

 

『レッド・ドラゴン』で、ウィルが精神科に入院していたと記述されていることを覚えている視聴者としては、イヤ~~~な予感が湧いてきました。

 

ウィルの宿敵フレデリック・チルトン登場

アラナがギデオンの心理操作をしているのではないかと疑った相手はチルトン。ダブルのスーツでキメまくった彼は、虚栄心を満足させるためならなんでもやりそうなトンデモ医師。

初対面のウィルがFBI講師を務めているけれども博士号を持っていないことを知ると、「ただの教師か」と嘲ります。ウィルはすかさず「夜勤の看護師を囚人と2人だけにしておくなんて」と切り返しますが、「人格障害と神経症の絶妙な組み合わせで、オタクは優秀なプロファイラーになったわけでしょう。…ぜひ、一度じっくり話し合いたいですねえ」みたいなことを言う。ウィルの脳内研究をしたくて涎をたらしている、卑しい根性が伝わります。

こいつって、精神障害の研究論文で名誉を得たいだけで、治療には興味なんてないのね。って雰囲気がバシバシ。皮肉にも、こんなに野心家なのに同じ職業につくハンニバルにもアラナ軽蔑されいる模様。

 

ハンニバル邸のショパンの曲が流れる優雅なディナーに招かれて、タン(舌)のアントレをふるまわれ、

Your tongue is very feisty and as this evening has already proven,

今晩よくわかったんだが、随分と雄弁な舌をお持ちのようだ。

it’s nice to have an old friend for dinner.

馴染みの友人と食事をする(友人を食事にする)のは、いいねえ。

なんて、言われっちまいます。

つまり、喰っちまうべき無礼者に分類されてしまったチルトン。この先どれだけ悲惨な運命がに合うのか?興味津々になりました。

 

演じるのは「Law&Order:性犯罪特捜班」でお馴染みのラウル・エスパーザ。初登場でこれだけの情報を与えてくれる演技、さすがです。

 

ハンニバルの怒りは冷たい炎~~~

ハンニバルがカニバルだと知っている視聴者は、"負傷した男の図"なんていう文献学的知識を駆使した芸術的・外科的殺人ができるチェサピークの切り裂き魔なんてハンニバルに決まってるじゃないかと思っているのですが、登場人物たちは闇雲に手探りいたします。

 

2年間息をひそめている切り裂き魔を、ジャックはギデオンを囮にして刺激し、あぶりだそうと計略を練ります。

その手先に選ばれたのがもう一人のウィルの宿敵、特ダネ記者のフレディ・ラウンズ。サイコパスがつく職業の第5位は外科医、第6位ははジャーナリスト、第7位は司法関係なんて興味深い論議の後に、独占インタビューをもらうかわりに「ギデオンが切り裂き魔に違いない」という記事を書くという取引を申し受けます。

 

iPadでその記事を読むハンニバルの恐ろしさといったら~~~

第2話のアラナを気絶させるところやアビゲイルに殺人隠ぺいを唆すところで

ハンニバルが目的のためには的確な暴力をふるう、とてつもない策略家だということは分かりましたが、表向きの紳士の顔つきしかまだ見ていませんでした。

 

今回は、平静な表情の下に潜む獣を目撃することになるのです。

iPadにそえた右手の人差し指と親指が、キリを絞り込むように神経質に動いている。いつもの静かな表情の中で眉が微妙に吊り上がり、眼の光が凶暴な怒りに変わる。

眼から出るレーザーで人殺しができるならこんな眼つきだろうというしかない、冷たく破壊的な怒り。

自分のタイトルである切り裂き魔を詐称された侮辱が許せないのですね。

 

胸をはだけて頑張ったヒュー・ダンシー(ウィル)の暴力殺人再現シーンも、この一にらみで吹っ飛んで~~~

 

キャ~~、これが本当のハンニバル・レクター!と、確信させてくれるマッツ・ミケルセンの微細表情の名人芸にシビレます~~~

 

そして、ギデオンの運命も相当に酷なものになるのだろうと、想像を逞しくし…

 

ハンニバルに弄ばれるジャック

末期癌ベラとの夫婦仲を相談したり、すっかりハンニバルと親友状態のジャックですが、ハンニバルから見れば自分を追い詰める作戦の長でもあるジャックは失敬な奴の一人(ハンニバルが切り裂き魔だという、ほぼ確定の前提に立つとそうなります)

ということで、ハンニバルのジャックいびりも始まります。

 

いちびりの駒は、その優秀さを見込んでジャックが切り裂き魔捜索に加えようと考えた研修生のミリアム・ラス。聡明な彼女は"負傷した男の図"殺人の被害者オルムステッドの死体から肝臓がキレイに切り取られていることから外科医の関与を推察した最初の捜査関係者。独自に調査活動を始めようとするのをジャックにいさめられて、以来2年間消息不明。

ミリアムが自分のせいで切り裂き魔に殺害されたと考え、自分を責め続けるジャックでしたが…

 

そのミリアムから何度もケータイに電話が

Please... Jack... I don’t want to die like this.

お願い… ジャック… こんな風に死にたくない。

自宅にいる妻のベラからの電話だと思ってリダイヤルすると、やはりミリアムの声が。

自宅を捜索すると、ミリアムの髪の毛が寝室でみつかり、切り裂き魔が自宅に忍び込んでいたことに恐怖を覚えるジャック。
次にかかってきたコールの発信元が天文台だと判明、そこに駆けつけてリダイヤルしてみると、ミリアム側の着信音が聞こえ、彼女がいると天文台に飛び込んだ行動分析課を待っていたのは、切り取られた片腕が掲げる使い捨てケータイ。

生きてる人間から腕を切り取るなんて、ぞっとする残虐としかいえません。

『CSI』の極上エピソードのように息をのむほどスリリングな捜査展開。とはいえ、CSIではないので、気持ちのいい終結はなくさらに事態は奥深い霧の中へ…

 

ミリアムが生きているという希望を持たせて、さんざん翻弄し、切り取った片腕をだけ返すなんて、なんちゅう追い詰めよう、なんちゅう残酷!鼠を迷路に閉じ込めてあっちこっちに拷問をしかけていじめる小学生みたいだなんて思ってますと、

 

ブランディを酌み交わしながら、ミリアムへの思いを語るジャックに

I’m sorry about your trainee.

研修生は可哀そうなことをしたね(研修生のことはすまなかった)。

と、ダブルミーニングを使って、本当に申し訳なさそうに謝るハンニバル。この人、無感動なサイコパスじゃなかったの?いったいどういいう性格?
行き当たりばったりな行動と感情にクラクラしてますと、実は最大の見せ場が~~~

マッツ・ミケルセンが史上最強のハンニバルになる瞬間

ハンニバルの居間から2年前のモノクロのフラッシュバックになって、

外科医が"負傷した男の図"殺人に関わっていると考えたミリアムが訪れたのは、オルムステッドの怪我治療をしたERの外科医だったハンニバルの心療室。

ER時代の記録を探してくるからとハンニバルは中2階に上がり、その机の上にミリアムが発見したのはハンニバルが描いた精緻な"負傷した男の図"。

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やっぱりハンニバルが切り裂き魔、ミリアム危うしとドキドキしてますと、靴下ばきになって足音もなくミリアムに忍び寄り、羽交い絞めにするハンニバル。

動きを封殺するために軽々と彼女を持ち上げて、背後から、いわゆるチョークホールド(裸絞)をかける。その顔が一瞬鬼神のような形相になったかと思うと、次の瞬間にはミリアムの髪の匂いをかぎ、やさしっく抱きしめるような気づかいを見せる。

 

背も凍る、この世のものならぬ悪の感触と、殺人という行為が持つ親密さの異様な官能性に魅せられて呆けてしまいました。

 

こんなハンニバルの表現は見たこともないけれども、これがアタシとってハンニバルの本来あるべき姿。マッツ・ミケルセンは至高のハンニバルだと、この時確信しました。

マッツは「ハンニバルを堕天使サタンとして演じている」と言っていましたが、まさにその通り!

マッツ、凄すぎ~~~ と、狂喜するアタシ。

 

これまでの5話、周囲の民の心模様を辛抱して見てきたかいがあった。報われたと満足するマッツ馬鹿な自分ではありますが、一方、このセクシーな絡みを見ると、ミリアムが『羊隊の沈黙』のクラリス・スターリングに差し代わるのかしら、

切り裂き魔の空白の2年間は、虜にしたクラリス/ミリアムの面倒を看るために起こったの?

と、想像が膨らむエピソードでもありました。

 

ついでに、リユニオンの動画です。

 

www.biruko.tokyo