キリング・ストーキングのファンダムを覗くと、シリアルキラーの暴力男オ・サンウの女子ファンが多くて、サンウのファンアートやミームだらけでビックリ~~!確かにイケメンで長身マッチョだけど、「お嬢さん、この男は狂った殺人鬼でっせ。近づいたらあかん!」なんて老婆心するアタシ。でも、「サンウはウジンを愛した」って作者クギも言ってます。なので、こんな奴の病んだ執着愛の経緯を探ってみることにしました。
※直接的な性表現もでてきますので、苦手な方はご注意ください。
※サンウの病理全般は下の「サンウの闇とその救い」で語っているので、興味のある方はご覧ください。
- サイコキラー、サイコパスは愛せるのか?
- サンウとヘンリー・リー・ルーカス
- 「好きなんです」という魔法 以下ネタバレ注
- 猫がネズミを弄ぶように... 第2~4話
- サンウが虐待するわけ 第4~5話
- サンウが課す試練は続く 第5~10話
- 超自己愛なサンウの罠は続く 第13~19話
- 人はそれをレイプという! 第20話
- サンウの変化 第21~35話
- ウジンの夢を叶えるサンウ 第36~41話
- サンウの愛 第42~51話
- サンウの求める究極
サイコキラー、サイコパスは愛せるのか?
女性を誘惑して、セックスしたら殺してしまう。サンウはとんでもサイコでサディスティックなな大量殺人犯です。『キリング・ストーキング』のキリングが象徴する主人公ですから。
そんなサイコキラーが人を愛することができるのか?「サンウはウジンを愛していたのか? 」って、よくファンダムで激論になるトピックスです。
猟奇殺人者=サイコパスでしょ。サイコパスは共感能力がないのでしょうだから、人を愛せないんじゃないですか?という疑問のサイコパスについて考えると…
ここでいう共感能力というのは、"自分以外の人の経験をその人の心理的枠組みの中で理解する能力、相手の立場で考えられる能力"ということになるのですが
サイコパスがつく職業の想定されるトップ10って…
・1最高経営責任者 (CEO)・2弁護士・3メディア関係者 ・4セールスマン・5外科医
・6ジャーナリスト・7警察官・8聖職者・9シェフ・10公務員
つまり、一定の人々に対して生殺与奪の権利を持ち、必要な時には、もしくは自分に利益になるときには情に絡まれずに状況判断したうえで人を犠牲にする能力が必要とされる職業群ですね。
で、これらの職業についたサイコパスたちは、社会の有能な一員として機能しているし、結婚して家族も持っている。彼らは善悪判断に左右されることはないけれども、社会内の人間として機能している以上、共感能力はあるのです。ただ、自分の利益に応じて共感スイッチを切ったり入れたりできるのが、高機能なサイコパスといえるでしょう。
サンウの共感能力は最初のうちは完全にオフ状態ですが、いつからかオンになっていく。ここら辺、読み込みがいがありそうです。
でも殺人鬼に愛することは可能?ってことになるんですが、純愛を貫いたサイコキラーが、実際にいるんです。
サンウとヘンリー・リー・ルーカス
彼の名はヘンリー・リー・ルーカス。ハンニバル・レクターのモデルの1人ともいわれ、全米17州で女性を中心に300人以上を殺したと自供する殺人犯。その背景など、サンウとの共通点も多いので、ちょっとご紹介しますかと。
ヘンリーは売春婦を生業にする母ヴィオラと両足を失なった元鉄道員の父親という、アル中の両親のの11人目の子供として生まれました。娘を生んで売春をさせる目論見だったヴィオラは男子だったヘンリーを憎み疎んで罵倒し、女装を強要したり、暴力を振るったり、客との性交を見せつけたり、虐待し続けます。夫婦間で虐待されていたのは父親の方だったということ、女装強要以外は、サンウと近しいものがあります。
こんな鬼畜母ですから、ヘンリーは物心つく頃には女性とセックスに対して激しい憎悪を抱えるようになり、14歳の時には17歳の少女のレイプ殺人を犯していたといいます。23歳の時に、ちょっとした口論から母親を刺殺して40年の懲役を科されたのですが...
10年程度で出所して、オーティス・トゥールという相棒と出会って、2人組で殺人しまくります。このオーティスにはベッキーという姪がいて、一説では知的障害があったようですが、ヘンリーという人間を無条件に受け入れ犯罪行為を手伝うようになり、ヘンリーもベッキーを愛してかわいい服を着せたり髪をとかしたり、身の回りの世話をしていたというのですね。けれども、セックスは求めず、求められても受け入れず、自分の欲求が高まると他の女性をレイプして殺害していたという...
性愛を悪としてしか見られないヘンリーは、とんでもない純愛を貫いていたわけです。ベッキーがキリスト教に目覚めてヘンリーを否定した時に、ヘンリーはベッキーを殺害することになるのですが、それ以前には、歪んでいるとはいえ純愛の蜜月があったと...
『ハンニバル』TVシリーズでも何回か解析しましたが、どんな人間でも理解され、受け入れられ、愛されることを望んでいるのですね。サンウも例外ではないのです。
「好きなんです」という魔法 以下ネタバレ注
ヘンリー・リー・ルーカスとは状況が異なりますが、母親の浮気現場や父親との性交をを見せつけられ、家庭を破壊され、レイプされて殺されかけたサンウも女性を憎悪しています。
男子が女性にレイプされるって、男子側で身体的な反応が起きないと無理ですね。母親に襲われて、一物が反応しちゃったからレイプされちゃったわけです。だから、サンウの場合自分の欲望を刺激してしまう女性をすべて悪だとみているのだと思います。
レイプっていうのは、基本的にパワーの行使ですから、サンウは母親に男性としてのパワーを奪われたと感じているのですね。
20代前半のサンウは性欲でギラギラしています。視線がいつも、女性の胸の谷間や股間にいってます。自分をそんな風にギラギラにする得体の知れない女という悪を、性交して惨殺することでパワーを奪い返しているつもりなのでしょう。
で、殺人鬼としての正体がバレると、当たり前のことですが女性は抵抗して、口汚く罵ってくる。パワーを奪い返しているつもりのサンウとしては、さらに怒りが増して残虐になるという...。この繰り返しだったかと思います。
ところがウジンは男性だからサンウの性欲を刺激しない。だから、得体のしれない悪ではない。おまけに、殺されかけても罵るかわりに「好きなんです」なんて、まだ言ってる。
「俺のこと好きってホントかよ。オモシレエ。しばらくソバに置いて本当なのか試してやろう」って、気持ちになりますかと。
猫がネズミを弄ぶように... 第2~4話
殺し部屋にしている地下室への階段から突き落として右足を骨折させて、なにかあった時には処分しやすいように裸にして地下室に鎖でつないだり。ウジンの恋心を玩具にするようにキスしてみたり、それで隙が見えたところで健常な左足をハンマーで潰したり、と思えば包帯を巻いて手当したり…。
猫がネズミを弄ぶようにサンウはウジンを肉体的・心理的に追い詰め、混乱させます。
それでも、キスされると「やさしいこの人が心から好き」、シャワーに入れてもらったりちょっと親切にされるととか「地下室で一人にしないで。なんでもします」なんて、ウジンは言い出します。
ウジンのサンウに対する執着愛のっ狂いっぷりが時々現れて、読者はゾッとしいますが、サンウは楽しんでます。
地下から出す交換条件として、サンウはウジンに女装で主婦業すること、廊下にひいた境界線を超えないことを強制するのですが、これが2人の関係の一つの転換点になったのだと思います。
サンウが虐待するわけ 第4~5話
動けないので可動式の椅子に座って食事をつくったり、洗い物をしたりなのでウジンは当然失敗 。そうすると、容赦ない殴る蹴るのDV。自分は立派なテーブルを使っているのに、ウジンはキッチンの床に座らせて小さく古い机で食事させたり...
最初はウジンはただの動くおもちゃで、うさばらしと侮辱のための虐待かとアタシも思ってました。が、古ぼけた衣服がどうもおばさんぽく、ウジンの姿にサンウは母親を重ねているみたいなので、もっと根の深い欲求を感じ…
恐ろしくて逃げることすら考えられない。サンウの顔色を伺って作り笑いをして、大人しく従い続けるウジン。その彼によく研いだ包丁を渡したり、ネズミキラーをみつけさせたり、まるで裏切るネタを与えてテストしているかのようなサンウ。
決死の覚悟でネズミキラーで毒殺を図ってもサンウはヘイチャラ(実は中身はすり替えられてました)。一緒に毒入りを食べたと信じて気持ち悪くなり、倒れてしまったウジン。そんなウジンに怒りもせず、地下へも戻さず、どうやら寝室代わりにしている1階クローゼットみたいな小部屋に抱えていき、介抱するサンウ。その後、地下室で女性を拷問しているようなので単に殺し部屋を空けたかったのかと思ったのですが~~
毒殺未遂を白状させようとするサンウにウジンがしたのは、「これからはテーブルで一緒に食事したい」という意外な告白。
この言葉によって、小さな食事机の件はサンウと母親が父親から受けていた虐待だったという告白に繋がり~~
それがさらに、ウジンが両親を亡くして祖父母に引き取られ、今も叔父と住んでいる(これは嘘ですね。失踪届がでるかも的な抑えだと思います)けれども、「寂しいからリストカットしたり、ストーカー行為を繰り返した」発言に繋がります。
被害者意識で凝り固まったサイテーなタイプと非難しながらも、
「俺たちは2人ともみなしごだろ…。(1人で)寝てると(死んだはずの)母さんがドアを叩いて遠くから呼んでくるから怖かったんだけど、ウジンといると救われる。愛されている自信が湧く」みたいなことを言いいだし、ウジンにキスするサンウ。
両親が高校時代になくなり、ずっと一人暮らしだったサンウ。殺人鬼ですから、当然心を許せる相手はいない。本当にひとりぼっちだった。
狂ってるからぼっちなのか?ぼっちだから狂ったのか?は文脈に書き込まれていませんが、殺人鬼とわかっても「サンウが好き」と言い続けるウジンが心支えになるのは当然の流れですかと。
サンウと母親の関係を知ってから振り返ると、サンウは母親似のウジンに母親の格好をさせて、母親が父親から受けた仕打ちを体験させている、毒殺計画を実行させたのも、後から考えると母親の行為を再現させる儀式だと考えられます。
同じように孤独で、肉親の虐待またはネグレクトで深く傷ついているウジンを知って、ウジンを"良き母"にする決意をしてしまったので、
ウジンが自分に無償の愛を与えてくれる"母"となってくれるかどうか試していたのだと、考えるようになりました。
実の母とキスを交わしていたサンウですから、キスもこの決意表明の現れですかと。
サンウが課す試練は続く 第5~10話
でも、キスした相手が悪かった。エロ好きストーカーのウジンですから、キスなんてされたらスッポンのようにかぶりつく。
一物を「舐めてもいいですか」の顔つきとか、サンウじゃないけど「怖いぞ、お前」としか言いようがありません。で、「手使えよ」ということになって、ご奉仕しながら自分も一緒にイッテしまうウジン。
なんで、こんなエロ仕掛けをして殺されなかったのか?
やはり、ウジンの性別が男だからだと推測します。性欲はウジンの側にあって、サンウは物理的刺激に反応してるだけ。第21話のお風呂場でサンウが言うように、どこまでが演技か本物か分かりづらい女性と違って男子の興奮反応は「分かりやすい」。だから、ウジンは分かりやすくて、"女の魔性"に欲望をそそられるのと違って、わけの分からない恐怖感がないからだと理解します。
"愛され実感"を確認したサンウはウジンを地下に閉じ込めるのを止めて、1階の布団で一緒に寝るようになります。
ウジンの希望通りフェラする許可を与えると、これがメチャ下手。性欲は強くても行為にはウブなウジンは、セックスと罪悪が結びつきやすいサンウにとって一段と安心できる相手でありますかと…
とはいえ、サンウが求めているの無償の愛を与えてくれる"良き母"への執着幻想ですから、ウジンの本心を試すテストは一段とキビシクなっていきます。
まずは、どこにも閉じ込めないで長時間留守にして逃げ出すかどうか試してみる。
もちろん、ウジンは罠にかかって歩けないのに境界線を超えて逃げようとします。サンウは待ってましたと地下の拷問部屋にウジンを連れていき、絞首刑にしようとする。
なのですが、首がしまって息が止まりそうなのに「サンウさん、助けて」と呼びかけてくるウジンに興奮してしまったサンウは、ウジンのパイズリならぬ、足ズリ状態になって見事失敗。
これって、物理的刺激ではなく、サンウが初めてウジンによって興奮した記念すべき瞬間ですかと。苦しんでる人間に興奮するっていうサンウのサディズムと、それでも続く"愛され感"が引き起こした異常事態なのかなあと思います。
でも、「もう十分でしょ。欲しいものがあるならハッキリ言って」なんてウジンに口撃されて、水攻めや喉カットなんて始めたりします。
後から考えると、 喉カットって凄い重要なポイント。実はかウジンにつけた傷は、サンウの母親が自殺を企て、母親が縛ったサンウが持つ包丁に向かっていき、自傷したのと同じ場所。
この行為にインスパイアされたのか、サンウはゲイの親父をナンパして地下に連れ込み、騙してウジンと親父を縛り上げ、親父の腹に向けて包丁を持たせて、ウジンの身体を押し付けて殺してしまういます。
ウジンに自分と同じ不可抗力の故殺を体験させるわけです。
どこまでも、悪しき母親との体験を"良き母親”ウジンと再現していくサンウの執着。この時点では母親の記憶を抑圧して、ほぼ忘れているサンウ。潜在意識に従っているからしつこくできる再体験。本当にゾッとします
超自己愛なサンウの罠は続く 第13~19話
無理やりな警官スンベによる非合法なウジン監禁疑惑の家宅捜索が入って、
故殺共犯になってるウジンが見つかるのを怖れて隠れて難を逃れるのだけれどもウジンが逃げ出したと勘違いしたサンウが裏切られたと半狂乱になり、
キッチンの流しの下から出てきたウジンをぬいぐるみみたいに抱きしめて
「これからはずっと一緒にいよう。永遠に」っていうところの流れ、怖いですね。
自分が封印した記憶を共有してくれる、どんな状況でもソバを離れない、愛していると言い続けるウジンに対する依存が決定的になる瞬間。狂人の依存が始まるんだと、背筋が凍る感じがしました。
これを機会に2人の関係は大きく変わり始めます。
サンウは積極的に、ウジンを構い始める。
ウジンが住んでたアパートを引き払いに行って、滞納してた家賃を支払ったり、
なんと、一緒に外出して着替えがないウジンにおソロのセーターを買い与えたり、
「今日は記念日になる」なんて言って、文化祭に連れ出したり、仲間との打ち上げに連れてったり、一見、やさしくなってるように見えますが…
これらの行動って、新たな罠です。
アパートの件で戻る退路を断っといて、外に連れ出して、ボディタッチなんか入れて、エロ気満々のウジンを挑発しながら、ところどころで置き去りにしてトンずらするかどうか試している。残酷な心理戦を始めたわけです。
一度は逃げようとしたけれども、下級生女子のジウンとデュエットするサンウを見て嫉妬と恋慕に駆られてトイレに閉じこもって泣いてるウジンとのシーンときたら~~
「サンウさんはイケメンだしカッコイイから...誰からも愛されて...それに比べて…」って、劣等感と自己嫌悪の告白されてしまったのに、自分がカッコよっかったかってとこしか聞いていない。
こういうナルシストの勘違い男って、たまにいますねえ。ヤダ、こいつ!って思ってたら、褒美にフェラするの許してやるみたいな態度。とことん、自分勝手なんです!
さらに、打ち上げで思いっきり孤立してるってことを自覚させ~~
下級生のジウンを家に連れ込んでウジンにセックスを見せつけてた挙句、
「(ゲイの)おっさん殺しは練習。俺たちこれで本当に一緒にいられる。死ぬまでずっとな」
なんて言って、ジウン殺しを迫るのです。
で、ジウンの罵詈雑言がウジンのトラウマをトリガって、彼女をズブズブに刺し殺してしまうったウジン君、まんまと罠に陥没ですわ。
「お前はいつも苦痛に悶えてきた被害者だったんだ
一度くらいはその溜まった鬱憤を晴らさないとな
善良なフリ無垢なフリばっかじゃ疲れるだろ」
とウジンを労うサンウ。たしかにその通りなんですけど…
記念日って、ウジンも殺人犯にしたてて、究極の仲間にするってことだったのね。実利的に考えると、お互いが相手の殺人現場の目撃証人になったら逃げて警察に駆け込むのも至難になるし。もう、狡猾な心理操作に唖然です。
サンウて、口が達者なんです。巧みに事実を捻じ曲げて、自分に都合のいい方向に強引にもってくのが得意。こういう男っていますねえ。
世の中の男の悪いところを全部凝縮したようなキャラのサンウ。そのリアル感で、嫌な奴だと思いながら、次に何するのか興味がそそられてしまうんですね。
人はそれをレイプという! 第20話
人殺しなんてだいそれたことをしちゃったのに「全然なんてことない」と、呆然自失状態のウジンが答える。と、それでは面白くないと、今度はウジンを追い出そうとするサンウ。
この時点の彼はウジンを信じ切れないんでしょうね。依存と虐待の間を行ったり来たりしています。
ウジンの方は、「外に出るのは怖い、放っといてくれ」と寝室の布団の中に潜り込み、頭隠して尻隠さず状態。
それが面白かったのか、ウジンのアパートから持ってきたディルドをウジンのお尻にグリグリ押し込んで、カエルの解剖をする中坊みたいに喜ぶサンウ。
「痛い!やめて!」って言われても、「お前ヤリたがってじゃないか、エロボケ、カス」みたいに言って続けてる。
これには、アタシもギョッ!ですよ。潤滑剤も準備作業もなしって激痛、ケガの元でしかないですよ。女じゃないんだから、ヤッてれば十分に潤うなんてことはないの!
ゲイセックスのメカニズムを知らないなんて言い訳にならない!「痛いからやめろ」って言われて続けるのはレイプだぞ、このアホンダラ!
って、さすがに激怒しましたね。
なんですが、サンウはウジンがヴァージンだと思ってますし、セックスに対応できないウジンの"良き母"加減は、サンウの中で"聖母"ぐらいまでにアップしましたかと...
サンウの変化 第21~35話
”ハイキングでデート"なんてテキトーなことを言って、ディルドレイプの痛みを引きずってるウジンを無理やりジウンの死体廃棄の旅に連れていくサンウ。
「お前が殺したんだから責任持て」みたいな感じで山中に墓穴を掘らせたり、死体の上に突き落としたり、嫌がらせとしか思えなかったのですが~~
これまた、サンウの母親が父親を殺した時にやらされたことを、ウジンに強制してたのです。ウジンに着せてる服も、母親がその時着てた服。
つまり死体廃棄旅行は、サンウにとって”実の母"との嫌な記憶を書き換える大事な、大事なまた一歩。死体の上に突き落としたのは、底辺男のウジンが死んで"良き母"として再生するための儀式だったかと思います。
なので、この儀式の後は普通のカップルみたいにウジンをショッピングに連れていったり、旧友と出くわして意地悪されてるの見たら庇ったりするわけです。
ところが、ウジンと叔父の関係を追及して、ウジンが抵抗することもなく性的虐待を受けてたと知ると、サンウは「それって合意だろ、汚ねえ!触んじゃねえ」と、激怒して背を向けます。
常識人のアタシから見ると、虐待の被害者をこんな風に罵るなんて鬼畜としか言えないのですが、サンウの狂った世界では、それなりの辻褄があるかと察します。
汚れなき"良き母"のハズだったウジンが、汚れた実母と同じように近親相姦してた。ウジンの気持ちはどうあれ、そのイメージだけで動転してしまったのだと。
消してしまいたい過去の汚点を無理やり喋らされて、あげくに見捨てられたと思い込んんだウジンは手首を切って出血多量で失神しますが…
それを見つけてウジンの生命の危機に直面したサンウの狼狽が半端ないです。2階の自分の部屋に抱えていき、手当してから、子どもが母親とするように添い寝する。
これって、サンウの心理変化の重要ポイントですかと。"良き母"のウジンを失ったら自分には何もない、ウジンを失うわけにはいかないと、気づいたのだという描写だと判断します。
1階に置いといたら一種の下宿人。重大な秘密を隠した自分の部屋に連れていったというのは、ともに生きる相手としてウジンを受け入れたということですね。ウジンがウジンとして大事になり始めている状況かと…。
さらに、自分が亡き父のような虐待男になろうとしてる、そうはなりたくないと気づくのもここです。
とはいえ、男の単純バカっぷり満載のサンウですから、一緒にお風呂に入って「あれは仕方なかった...お前は悪くない…汚いなんて思ってない」と態度を改めたまでは良かったのですが~~
「お前、俺とヤリたいんだろ...ヤる?」なんて、すぐ後に迫ります。サンウが信じ切れなくなってる、トラウマから回復しきれてないウジンに拒絶されると、怒って水攻め。
懲りない暴力バカ男っすね。
でも、自殺されたら困るのでバイト先にもウジンを連れていくようになる。
そこでウジンがスンベに捕まって身体検査されて両足の怪我が発覚。しつこいスンベの違法家宅捜査がまた入って、2人とも警察に連行され~~~
スンベにあの手この手で脅されても、ウジンが誘拐・監禁とか殺人の目撃証言とか一切しないので、結局釈放されて、スンベは懲戒解雇になると。
捜査がうまくいかず怒り心頭のスンベのボコボコに殴られたサンウは、家の玄関先でウジンにDVして鬱憤晴らし!した後で、裏切らなかったご褒美みたいな感じでガチなセックスを始める。もちろん、ウジンは「ギャア!痛い!やめて」ですよ。しっかりした準備なしでやるのはレイプだって、何で分からないんだろう?不勉強は犯罪ですよ!
でも、最初はウジンを「キモいホモ」としか見られず、「手だけにしとけ」って言ってたサンウにしてみれば、大きな進歩でもありますかと。
何でサンウは男相手にセックスできるようになったのか?相手が男だってことに抵抗はあるようです。だから、背後から襲って顔を見せるなとか命じている、
加えて、欲望はあっても、ウケのセックスがウジンにとっては痛みでしかないということが分かって、人を苛むのが快感っていうサンウのサド心にはまったということもありましょう。
でも、もっと奥深い理由は、ウジンが一番欲しいものを与えて、カップルとしての絆を深めるってとこにありと思うのです。
ウジンの夢を叶えるサンウ 第36~41話
ここでサンウの悪夢出現。顔のない実母と戯れていて嫌悪感にかられて包丁で刺し殺そうとするのだけれど、実母がいつのまにかウジンにすり替わっていて殺せなくなるサンウ。聞こえてくる「ママは汚いの」という声。
2人を混同してしまうけれども、ウジンは殺せない。2人を切り離そうとして苦闘するサンウの潜在意識が垣間見られる夢ですかと。
目覚めると、「昨日の夜、初めて楽しむことができました」なんて言ってくるウジンに
「初めてじゃないだろ。お前も叔父さんも中古だ。俺に不公平だろ」なんちゅう嫌味を言ってしまいますが~~
サンウは反省してウジンのことを知ろうと、母親とのフラッシュバックに悩まされながらも打ち明け話を真剣に聞くようになる。
ひきこもりのウジンへの見方も「みすばらしいいじめられっ子」かえら「城に閉じ込められたお姫様」に変化しています。
"2人の初めて "体験をウジンに体験させる努力も始めます。
テーマパークに連れていったり、プレゼントを買ってやったり、記念写真を撮ったり…。そんなヤワなことしてる自分に嫌悪感らしく、記念写真を握り捨てようとしても捨てられない。
喜ぶウジンの顔を見て「俺を信じるな。めちゃくちゃになっちまうぞ」なんて呟いたりする。
焼肉のディナーデートで初酔い体験させてやったり。持てるに泊まって、ゲッとか思いながらもフェラのお返しをする努力を試みたり...
ここまでは盗聴器をしかけたスンベへの牽制でもあり、絆を深めたことでスンべに勝ったと確信したりしてますが、決定的にナルシストだったサンウがウジンの立場を考え、時には不憫に思うようにもになっている。スゴい成長です。
セックスは相変わらず無理やりですが、ウジンにかける言葉は「ズタズタに引き裂いてやりたい顔」から「可愛い」に変わっている。ウェアを買いそろえてやって、スキー旅行にも連れていく。
サンウはウジンに対しては衝動的に反応するので、嘘ではないと推測されます。他人の気配に敏感で、執念と恐怖で『ロード・オブ・ザ・リング』のゴラムみたいに引きつってたウジンの顔も、次第に愛らしく変化していきます。自己主張やスノーボードを盗まれるような失態ももサンウに許容してもらえるようになり、
ウジンはサンウと付き合ってる感に自信を持っていくのですね。
そして、どんな仕打ちにも耐えて裏切ることがない、子どものように無垢なところがあり、ひたすら自分だけを見てくれるウジンの盲愛に、サンウもハマってしまうのですね。
サンウの愛 第42~51話
とはいえ、サンウの実母が残したトラウマは重過ぎる。
実母ソックリで義理の息子を心から愛する健気な女性出会ってから、サンウはその面影につかれ、セックス嫌悪とウジンに対するパワー行使のレイプ癖が復活してしまう。
実母から得られなかった無償の愛を、その女性が息子に与えているのが許せないのですね。2人がケガで動けなくなってるのを発見し、彼女がどれほどに役立たずの悪い母かと罵り倒して、絞殺してしまうまでサンウは立ち直れない。
結局、サンウという男はトラウマに押しつぶされるしかないのです。そんな男でも、なんとかウジンを過去のトラウマから解放しようとしています。
でも、繊細な思いやりを欠いたサンウですから、ウジンをレイプした叔父さんを自宅に誘い込み、ウジンの目の前で殺すなんて極端な行動に出て、「お前のかわりに殺してやった」的に得意満面。
叔父の顔など2度と見たくない、過去を忘れたかったウジンはレイプのトラウマ復活と殺人のショックで、「(サンウは)頭がおかしい。殺したいなんて考えたことない!」と叫びだし、その姿がサンウの実母の姿をトリッガてしまい、サンウはその場を逃げ出してしまいます。
以前のサンウだったら、ウジンの拒絶は暴力で抑え込んでました。でも、今はそれができない。ウジンが傷つけばサンウも傷つく。2人の共依存の中で、サンウのパワーがウジンを支配するのではなく、ウジンのエモーションがサンウを支配するようになってきたのです。
父親が眠る山中に逃れて、気持ちを落ち着けるサンウ。サンウが留守になると、再度サンウ愛を確認してしまうウジン。数日後に戻って「俺ってダメ男。怒りをぶつけて悪かった」とか認めて、叔父さんの死体を処理する際にも、ウジンが気づかないようにアニメの映画のDVDをかけたりするサンウ。
反省する心を持ち、ウジンを傷つけない気遣いも始めたのですね。
数少ない肉親を殺されてもサンウを心の底から抱きしめてくる「お前はどうしてそこまで馬鹿なんだ」なんて言いながら、ウジンを愛おしく哀れに思っている。「可愛そうに」なんて、サンウが自分以外の人間の感情に押し流されるのは、初めてのことです。
「お前も俺に同情してくれ...俺を憎まないでくれ」なんて、一人で強がって生きてきたサンウがついに弱音まで吐くようになる。
自己憐憫に満ちたエゴなセリフではありますが、ウジンに嫌われたくない、嫌われたら生きていけないという告白でもありますかと。
セックスでもウジンに快楽を与えるように努力を始める。
もう、ウジンは気晴らしのオモチャではないのですね。エゴなサンウが気遣いを見せる。
それって、愛でしょう。病んで歪んでいるけど愛。サンウはウジンを愛するようになったのと、言って間違いないでしょう。
サンウの求める究極
なんで、サンウが急にウジンに対して素直になったのか?
この時点で、サンウは大学をすでに中退しています。さんざん殺人を繰り返し、警察の包囲網も徐々に狭まっている。
自分の死を潜在的に意識して、本当に欲しいものが見えてきたのではないでしょうか?
この後、サンウはウジンの願いを聞いて"結婚の誓約"みたいなことをします。
ウジンはサンウとともに生きていることを望んでいる。でも、サンウが望んでいるのはウジンが一緒に死んでくれること。それがサンウが求める究極。
こんな未来への思いの食い違いが、幸福な結末を生むわけもなく...
ヘンリー・リー・ルーカスではないけれど、残忍な連続殺人犯と無垢な恋人の蜜月が続くわけもなく…
なによりも、ここまでサンウの人生を狂わせた母親の怨霊が2人の愛を壊すのは目に見えています。
後は、サンウがどう壊れていくか見守るのみ。
そこは、母ウンソを中心に、『キリング・ストーキング』をまた深読みしていきたいかと思います。