海外エンタメ 千一夜物語

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TVコンテスト『ボリショイ・バレエ』のマリア・ホーレワとホンモノ 動画付き

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○○コンクールとか○○コンテストとか、インチキ臭いと思っているアタシ。昔は、本当に才能ある無名の若者発掘の場だったのかもしれない。でも、今の世の中はすべてビジネスなので、ビジネス上の思惑やら参加団体間の力関係で優勝者が決まることが多く、次席くらいに宝の原石がいたりすると思うようになってきました。

ってことで、ちっとは内情がわかってるロシアのバレエコンテスト番組を掘ってみいました。

ガラと受賞式。テレカナルの公式なので動画リンクアップします。マリア・アレクサンドロワ、エフゲーニャ・オブラズツォーワ、イーゴリ・コルプ、デニス・マトヴィエンコなんてスターたちのガラなんで、お好きな方はご覧ください。

 

 

TVシリーズ『ボリショイ・バレエ』って

世界に冠たるモスクワのバレエ団のボリショイ・バレエとは何の関連もありません。ボリショイ(Большой)って、デカいっていう意味のロシア語。

ですから、番組タイトルは『グランド・バレエ』ってなところです。私の記憶が正しければ、25歳以下の若いバレエダンサーのペアを各地の劇場から招いて、パフォーマンスを競わせて、バレエ界の重鎮が評価してファン投票があって、みたいな形式でしたかと。

 

第1シーズンは2012年。男性の優勝は当時モスクワ芸術座所属のセルゲイ・ポルーニン。『テイク・ミー・トゥ・チャーチ』の動画がバカ受けして、今では世界のアイドルになっているポルーニンの出世街道驀進の始まりでした。

女性の優勝者は同じくモスクワ芸術座所属だったクリスティーナ・シャプラン。TV受けする可愛らしい顔立ちと女優的な演技で人気爆発しましたが、実力が人気に追いつかず、今は古巣のマリインスキーバレエに戻って第1ソリストに収まっています。

この時次席だったのが、今ではボリショイを代表するプリンシパルバレリーナのオルガ・スミルノワでしたかと。表情の硬さをボロクソにけなされていた彼女が、今ではロシアを背負う大女優バレリーナになっているというのは、不思議な明暗です。

この他にも、ボリショイ劇場バレエからは、今ではプリンシパルのアルチョム ・オフチャレンコ、ウラディスラフ・ラントラートフ、第1ソリストのアンナ・チホミロワが参加していましたっけ。

マリインスキーバレエからは、今プリンシパルのアンドレイ・エルマコフ。パートナーになるはずだったオクサナ・スコリクがとんずらしたので、急遽、選外でヴィクトリア・テリョーシキナ姉さんが登場しました。

今が旬のプリマと新人たちが並んで演技するわけですから、選外と言っても、どうしってもテリョーシキナに目が行く。出てくるたびに大ブラボーの嵐で特別賞がでて、姉さんのロシアバレエ界女王の位置を築く引き金となったという...

 

優勝すれば将来が安泰ってわけじゃない。評判に実力をどう合わせるか、後からどれだけ努力できるか?バレエの厳しさが身に染みる番組でした。

 

見えていたマリア・ホーレワの優勝

で、ご長寿人気番組となった『グランド・バレエ』。今年は司会にスヴェトラーナ・ザハロワを迎えて、youtubeでのHDオフィシャル放送も始まってと、一段と華やかになっておりました。

 

で、見始めてマリインスキーバレエの第1ソリスト、マリア・ホーレワが 参加してると分かった時、今回の優勝はもう決まってるなと確信しました。

 

だって、審査員の4人中3人が、マリインスキーの元男性プリンシパルであるファルフ・ルジマートフとデニス・マトヴィエンコ、女性プリンシパルのディアナ・ヴィシニョワっていうラインナップ。関係者を集めて勝ちに来てるって分かります。

おまけにパートナーには選考外でマリインスキーのベテランプリンシパル、ウラジーミル・シクリャローフをつけている。劇場上げて、総力で勝ちを取りに来たって、ミエミエでしょう。

 

まずは、第1週『眠れる森の美女』からオーロラのウェディング・パ・ドゥ・ドゥ。

 

 ホーレワは美しいバレリーナです。背は高くないけれども、顔が小さくてラインが長く、柔軟でアカデミックな動きがザ・ワガノワって感じでキッチリしています。

そんなに素晴らしいバレリーナだったら、何故シクリャローフーがパートナリングする必要があるのか?

この秋でプロ3シーズン目のホーレワは、まだ体幹が弱いので高度なパートナリング技術を持つ相方が必要だからです。完全に、シクリャローフに回してもらってます

大回転シーケンスの2個目(3:39~)以降は、自分でセンターが取れなくなっています。そこを修正しながら、シクリャロフが回してくれてるんですね。若造にはできない技です。

ヴァリエーション終盤のシェネ(8:15~)にもスピードがない。最後の連続ピルエット(8:21~)も、コンクールの優勝水準だとダブルピルエット3回なのですが、シングルで初めてダブルは2回にしています。けっこう、グレードダウンが多いです。

 

第2週『ラ・バヤデール』影の王国のニキヤ https://youtu.be/sWNsKipMSBs

第3週『パキータ』グランパからのヴァリエーション https://youtu.be/3UdFRUwR3HU

第4週『ライモンダ』夢の場面 https://youtu.be/s8VD4xEftQ8 

第5週 『PIONEER SUITE』コンテンポラリー https://youtu.be/ElEe8A6XrkE

第6週 『AFTER THE RAIN』コンテンポラリー https://youtu.be/az4IZUTtm2c

 

どれも美しくまとまっているんですが、グッとくるインパクトがないんですね。

アタシ的には、マリインスキーの第1ソリストも務めるアレクサンダー・セルゲイエフが振り付けた『PIONEER SUITE』が気に入っています。ホーレワの精神的な幼さや、得意な技術、苦手な技術を熟知してるセルゲイエフ、コミカルなテイストの中に審査員の評価がアップする多彩な技術をギシギシに詰め込んでます。

セルゲイエフの振り付けは、いつも踊り手のいいところを上手に引き出すので、けっこう気に入っているのです。

 

と、ブチブチ文句言ってますが、ホーレワが嫌いなわけではないんですね。3年目のシーズン頭で個性がすでに開花してるバレリーナなんて、稀なんです。

ユリアナ・ロパートキナとか2年目で立派な『白鳥の湖』主役デビューしてましたが、若いのに成熟した抒情性というものを持つ、特別な特別な人だったんですね。

 

今どきの20歳くらいの女の子に、ニキヤの情念を理解しろっていったって、ライモンダが会ったこともない婚約者に寄せる恋心を分かれったって、無理が大きいです。

20歳くらいで自分が少し理解できるようになって、さらに昔の女性たちの抑圧された感情を自分の中で納得するのにも時間が必要。

後、1年でも2年でも待ってくれたら素晴らしいお披露目ができたはずだと…。

シクリャローフも全部まとめて面倒見ますな大仕事の上に、若者に交じって飛んだり跳ねたりする必要もなかったかと。シクリャローフを出すなら身体と精神のバランスが男性の場合頂点に来る28~30歳(2013~15)にしていただきたかったと...

 

ホーレワを何が何でも売り出したいマリインスキーの台所事情も察せられます。エカテリナ・オスモルキナからテリョーシキナ、オレシア・ノヴィコワ、アリーナ・ソーモワっていう主力スターたちがどんどん年喰ってるので次世代のスターが必要なんですよね。

でも2010年入団のユリア・ステパノワとか2011年ワガノワ卒業のオルガ・スミルノワとか、スター性のある人たちをボリショイにとられて後続世代がスカスカしてるってのは、バレエ団の失策。

ホーレワにその穴を埋めさせるんじゃなくて、時間をかけて育てていただきたいのね

後一年がなぜ待てない?と怒るわけです。 

 

アレクサンドロワの根性

そういえば、最近は魂を揺るがすようなダンサーがいないなあと考えながらボーッとガラを見てましたら、第1回参加のラントラトフがコロッとした女性と出てきて(35:20くらい)~~

その気さくな感じの女性が、元ボリショイプリンシバルのマリア・アレクサンドロワに似てるなァ、あれ、ザハロワがアレクサンドロワって言ったかも。やだ、アレクサンドロワだわ。バリバリの現役やめて太ったのねなんて思ってるうちに演技が始まって...

すると、やっぱりアレクサンドロワは凄いのね。ドスコイな根性ってか~~

人生は思い通りにいかなくてつらいことも多いから、愛を掴んだら全身をなげうつんです」みたいな感じですか?

ラントラトフは何してるか分からないんですけど、アレクサンドロワには感銘。絵に描いたような美しさがなくてもいいの。リアルがいいの。

と、つくづく思いました。

 

コルプの奇才

それからデニス・マトヴィエンコの自己満足な踊りとか、キム・キミンの実直なコンテンポラリーとかあり、

第1回優勝して成長乏しいシャプランが出てくるみたいで、何をやらせるのか、トリに近いんだしシッカリしたものを見せて欲しいわよと、ブチブチ考えてたら、なんとマリンスキーはパートナーにイーゴリ・コルプをふってきたんですね。

コルプは奇才です。プリンシパルなんですけど、『眠れる森の美女』や『ラ・シルフィード』の魔女とか、『シュラーレ』の森の怪物とかいう奇怪な役どころがお得意。私立バレエ学校の子どもたちが演じる『くるみ割り人形』ではあでやかなマダムに変身してましたっけ。

 

コンテンポラリーでは、のたくるような、独特なコルプ様式みたいなのを確立しています。『Beggining』に出てくるルネ・マグリット叔父さんの不思議な哀愁とか、たまりません!

もうね、アタシはアーティストとしてのコルプに絶大な尊敬と信頼を寄せています。上野駅の構内でお見かけした時には、思わず走って行って

「いつも素晴らしいパフォーマンスをありがとうございます!」

なんて叫んで顰蹙をかったりしたくらい、ありがたく思ってます!

 

ガラの演技は1:29:45くらいから。シャプランはいつも通り顔芸で終わってますねえ。ダンサーなのに、何で身体で表現できないんだろう?

コルプはといえば~~

このオヤジ、悩み多い人生の虚しさを徒らな情事でうめようとしてるんですか?この人物のエゴないやらしさも痛さも伝わってきますねえ。ドスコイだけではどうにもならない、細やかで洗練されていてパワフルな表現力というのでしょうか?

ここまで奇才だと、動けなくても舞台に出続けてほしいと願ってしまします。

 

 

キレイに綺麗にもいいけれど、

それを超えた人生のリアルとか、破天荒な情念とか、この世ならぬものの気配とか、観客はそういうの見たいんですよ。それがホンモノなんですよ。

映画やドラマや芝居と何も変わらない!ってことを、若いダンサーたちにも分かってほしいなと。